中学校最大のイベントと言えば、修学旅行だろう
今回僕たちは広島から奈良まで四泊五日の旅に出かける事になった
最初は飛行機で広島まで飛ぶ事に
着いた頃に僕は早くも疲れてホテルのベッドにダイブした
「あー、やっと着いた!」
「うん、結構長かったね」
同室は英二と高槻のいつものメンバー
それにと大崎さんが加わって5人の班となる
「今日は移動だけで自由時間たっぷりあるからいっぱい遊べるにゃー」
「英二元気だね」
「おうっ!」
「さんだって元気さ!!」
いつの間に!!
「大崎が班長会議でいないから遊びに来たよー」
「班長は大変だね」
「あれ、ランちゃんがいないんでない?」
「キャンディーズとか今の子誰も知らないよ」
「まぢで!?」
カルチャーショックにはかなり衝撃を受けているようだ
……って言うか同じ歳じゃないの?って
「高槻は今女の子に呼ばれていったよ」
「愛の告白ですか!」
「そんな感じだったかな」
「よっしゃ!こっそりからかいに行こう!!」
「にしても、なーんでこんな時に告白するのかにゃー」
「こんな時だからこそでしょ」
途中合流した大崎さんが英二に言った
「今日付き合い始めたら後の三日間はラブラブ絶好調な上二人きりで過ごせるからねぇ」
「あー、なるほど!」
壁に隠れながらひそひそ話
そしてその目線の先には高槻と女の子が二人きり
案外近くまで寄っているので話し声が聞こえる
「高槻君、ずっと好きだったの!」
「それで?」
いつも通り、興味の無い事には冷たい対応だ
「えっと……良かったら付き合って欲しいなぁって」
「良くねぇよさっさと失せやがれ。迷惑だ」
「この野郎ー!!」
が高槻にスクリュードライバーを喰らわせた
「この野郎!今死ね速攻死ねNOW死ね!!」
「お前、いきなり何しやがる!!」
「問答無用インド洋!ラブロマンスはコーエー!!女の敵は死すべし!!」
はカマキリ拳法の構えをした
て言うかだったら本当に使えそうで嫌だ
その日はが高槻を沈めたところで終わりました
〜二日目〜
京都から大阪までバスで移動
隣の席の英二はずっとおかしを食べ続けている
その内バス酔いしないか心配だ
「はいはーい!あたしバスガイドやるー!!」
「はあ!?」
が高らかに手を挙げた
確かに今日のバスは珍しくバスガイドがいない
「ねーせんせ、やってもいいっしょ?あたし京都には詳しいって言うかあたしが京都だから」
「いや、そりゃねぇだろ」
先生は至って冷静に突っ込む
はそれを無視する事にしたようで、座席から立ち上がって拡声器を手に取った
「あー、あーあー、おーさまのみみはダンボー」
訳の分からないマイクテストをした後、はバスガイドのように左手を窓の方へと向けた
「えー、皆様左手をじっくりご覧ください。中ほどにありますのが古来からその存在感を示しております『中指』でございます」
「「「「「中指かよ!!!」」」」」
うわ、皆の声がハモった
そりゃあ突っ込みたくもなるよね
〜三日目〜
大阪で自由見学……なんですが
は朝から機嫌が悪かった
多分生活指導においしんぼとこち亀全巻を取られたからだ
持ってくるもすごいけど没収した生活指導もすごいと思う
機嫌が悪いときのは本当にタチが悪い
………関わらないでおこう
と思ったその矢先
「おはよう不二君」
爽やかな笑みを浮かべたが横で大量の10円ヨーグルトを食べていた
数十じゃ済まない位のヨーグルトの空が足元に転がっている
「あら不二君ったらまだ寝てたのね。いい加減目開けなさいコノヤロウ」
そう言ってヨーグルトの空を投げつけてきた
痛くないけど精神的に痛い
「あんま関わんねー方がいいぞフジコ」
「うん、そう思ってはいるんだけどね……」
「に話しかけたら俺、威嚇されたにゃ」
それって人間的にどうなんだろう
そしては今食い倒れ人形を小脇に抱えて道頓堀川に飛び込もうとしているところを大崎さんに止められている
大崎さんもかなり必死だ
「あんな重てーもんよく持てたよな」
確かに
そして夜
「おーい、不二ー」
「どうしたの?」
「大崎たちのとこ遊びに行こーぜー。高槻また女の子に呼び出されてるんだにゃー」
「え……今はちょっと行きたくないなぁ………」
「なんで?」
「……うん、ちょっとね」
僕が言葉を濁していると、部屋のドアが開く音がした
「高槻?」
「違いまーす」
「あー、と大崎いいとこに来た!丁度暇してたんだー!」
「さっき皆で取ったプリクラ切って持ってきたの」
「マジ?見せて見せて!!」
「かなり面白く写ってるわよー」
英二と大崎さんは二人で盛り上がっている
自動的に僕とが残された
「うふふ、不二君」
「な、何?」
最大級のその笑顔が怖い
「まだ寝てるの?あなた一日中寝っぱなしねぇうふふふふ」
わざわざ嫌なネタ引っ張ってきたよ
そしてこの後、から漫画を没収した先生が一日で神経性胃炎を引き起こしたので、の漫画は無事帰ってきた
………だけは何があっても敵に回してはいけない
〜四日目〜
班でUSJを周る事になった
「不二ぃー、大丈夫?」
「う、うん……ちょっと酔っただけ」
「あんたと英二が無理矢理ジュラシックパークに連れて行くから……」
「不二メンゴー。吐きたいなら吐かせてやろうか?手突っ込んで。でも吐くなら菊の方ね」
「本気で気持ち悪くて吐きそうだから黙ってくれるかな」
「フジコ怖いぜぃ。あ、そーだ。酔い止めあるよ」
「あるなら早く出しなさいよ」
「酔い止めっつーても液キャべじゃけぇ」
「誰が酒飲むのよ誰が」
それから、大崎さん、英二の3人はスパイダーマンのアトラクションに並びに行った
「フジコー、茶で良かったか?」
「高槻、いないと思ったら飲み物買いに行ってたんだ」
「おー。自販機無かったからクソ高い売店で買った。ありがたく飲め」
「うん、ありがとう」
「っつーかお前マジで大丈夫か?今にも緑色の液体を吐かんばかりの顔してるぜ」
一体どんな顔してるんだ今の僕は
〜五日目〜
奈良公園で自由行動
「見てみてフジコ!鹿せんべい買っちった!食べるー?」
「………、鹿せんべいは鹿に与えるものであって人間は食べられないよ」
ワラとか入ってるし
「マヂで!?道理でさっきから鹿が食いついてくるとオギャー!!!!」
「ー!!」
が繁殖期で気が立ってる雄鹿に後ろからものすごい勢いでどつかれた
そして謎の産声を上げて異常に飛んだ。確実にメートル単位で飛んだ
「テメェ等あたしのケツどつくたぁいい度胸してんじゃねぇかアーン!?まとめて煮込んで踊り食いしたるわー!むしろあたしが踊ったらぁー!!」
は猛ダッシュで鹿に突進していった
僕はこの日初めて鹿でもおびえて逃げる事があるんだなぁと新発見してしまった
こうして四泊五日の旅は良くも悪くも大量の思い出を残して終わった
……越前がお土産に異様にでかい鹿の剥製を貰っていた事は見なかった事にしておこう