休み時間や昼休みは屋上で弁当食べて昼寝したり、バスケして遊んだりするのが殆ど

ああ、でも最近は知り合いが増えたから携帯のメールチェックも欠かせませんね









珍しく朝練が無かったある日のこと
僕が学校へ向かう途中、後からが走ってきた


「おっはよーフジコ!」
「おはよう
「いやー、たまに朝練無いと寝坊しちゃうね」
「そうだね。でもこの時間ならHRにぎりぎり間に合うから遅刻扱いにはならないよ」
「そっか。じゃあ走らなくてもいいね」


ぱーらりーらら、ぱらりらりー


「………着メロ?」
「うぃ」
「何でチャルメラなのさ」
「焼芋食べたくなるじゃん」
「……変えたほうが良いと思うよ」
「えー?」

が不満の声を漏らしながらも、携帯を開いた


「こんな朝に誰からだろうね?」
「多分キヨだと思うよ。毎日おはようってメールしてくんの」
「マメだね」
「私もそー思うですよ」






タイトル:キヨからおはようメール


『おはようちゃん。星占い見た?ちゃんの今日のラッキーカラーは蛍光黄緑で、ラッキーアイテムはマグカップ、ザリガニ、電子レンジ。ラッキーナンバーは59だって。だからちゃんは今日蛍光黄緑のマグカップに59匹のザリガニを詰め込んで電子レンジで調理してそれを食べたらラッキーって事だね。今日も1日頑張ろう!』





「………リ、リアルに想像してしまった……気持ち悪…」
「まだこれは平気な方だと思うよ。いつだったか『タコを踊り食いしながらラメ入り紫のセーターを着て7時間カバディをやる』ってやつあったし」


……ラッキーアイテムだったのかな、カバディ

て言うかそんな星占い信じてる千石もどうかと思う







2時間目、体育の授業


ぱっぱらぱらりこ、ぱっぱ、ぷぴ♪


ー携帯鳴ってるわよ」
「えー?授業中に誰だろ」


今日の授業はマット運動
倒立前転と側転が課題なのに、はバク宙を決めてしかもポーズまで取っていた


「て言うか着メロ……笑点?」
「うん。さっきフジコに着メロ変えた方が良いって言われてさー」
「それで笑点ね………でもそれもやめときなさい」
「えー」


は文句を言いつつメールを開封した


「あ、チョタからだ」





タイトル:助けて!

『たまにはこっち遊びに来てください!跡部さんがさんに会えなくて禁断症状が出てるんです!!』



「写メ付きだ」
「跡部君でも撮ったのかしら」


添付されていた写真を開くと、ラケットに乗って飛び回る跡部君とそれを慌てて追いかける樺地君と忍足君の姿


「たっ………タオパイパイ!!!
これが禁断症状!?


とりあえず、今日の部活は休ませてに氷帝に行かせようと思う
……桃白々だけじゃなくてその内シェンロンとか出てきそうだし










昼休み



俺は不二、高槻、、大崎のいつものメンバーでおべんとを食べていた


『今以上、そーれー以上、愛されるーのに♪』

「………ん?」


『あなーたはーそのー透き通った瞳のーままでー♪』


「………、携帯鳴ってる」
「あ、ほんとだ。よくわかったね」
「だって今時安全地帯って……何でってそんな好みが渋いんだにゃー」


しかも着うただし

「『冬の稲妻』とかの方が良かった?」

アリスなんて今の若い子誰も知らないよ!


「きーれいでしょ、ひーらひらと、いーい女でしょ♪」

は『ああ無情』を歌いながらメールを開封した
何でいちいち古い歌ばっかり歌うんだろう。中学生(しかも帰国子女)なのに


「誰から?」
「えーと……おとんからだね………あぁっ!!」

は慌てて携帯で電話帳を開き、すぐに電話をかけた


「もしもし父さん!?手に入ったの!?………片方だけかぁ。ま、いいや。後で黒い人が持ってきてくれるんでしょ?うん…うん……わかった。そんじゃ!」

通話ボタンを切ると、はまた弁当を食べ始めた


「何かお土産でも頼んでたの?」
「うん、ちょっとマンゴスチンをね」
マンゴスチン!?
「ランブータンも欲しかったんだけど手に入らなかったみたい」
「そんな物何に使うんだにゃ?」
「んー……ま、その内わかるよん」


後に大惨事になることなんて、この時の俺は知る由も無かった









放課後




「あれ?携帯落ちてる」

英二が机の下から携帯を見つけた

「このストラップ、つい最近見たような……高槻、誰のかわかる?」
のだな」

乾が後からぬっと顔を覗かせた
テニスラケットのストラップと気色悪い髑髏のキーホルダー(しかも暗いところで光る)
昼休みの時に見た、の携帯だ


「ちょっと見てみよーぜ」


英二は躊躇い無く携帯を開け、メールボタンを押した
俺は敢えて止めない。まあ気になるし

「受信ボックスでも見るのか?」
「うんにゃ。それは何か悪い気するし。送信ボックスのほうにしとく」

携帯見てる時点で十分悪いと思うが


「えーっと……昨日おチビにメール送ってるみたいだにゃ」
「ああ…そういえば越前は最近親に無理矢理携帯を持たされたようだ」
「俺、メアドに教えてるの見た」


控えめに見えてちゃっかりやるとこはやってやがる、あのチビ





タイトル:マジで!?


『幾ら苦いからってそれはさすがにやばいんじゃなかろうか!あ、あと煮込む時は鹿じゃなくてようかんとかマンゴスチンとかランブータンとかをお勧めする!』





どんな話の内容なんだ……!!


「確実にに毒されていってるな、越前……」
「こんな所にいたんすか」

部室のドアから越前が顔を覗かせる

「ちょっといいっすか?」
「あ、ああ……」
先輩、入っても大丈夫っすよ」
「うぃうぃ」


越前の後にもいた

「あ、私の携帯!」
「ここに落ちてたから拾っておいたんだにゃ」
「そっか。こんなとこに落としてたんかー。ありがと!」

は英二から携帯を受け取り、ジャージのポケットにしまった
怪しげな髑髏のみがポケットから顔を覗かせる


「で、用事って何だ?」
「へっへっへ、高槻!お誕生日おめでとー!!」
「二人でプレゼント作ったんす」
「おおっ、そういや今日誕生日じゃん!おめでと高槻!」

そういや、今日は俺の誕生日だった
最近忙しくてすっかり忘れていた


「で、プレゼントって何だ?」
「さっき調理室借りて作ったんだー。高槻甘い物苦手でしょ?だから苦い物を作りました!ちゃーんと栄養面も考慮してあるですよ」
「それは興味深いな」
「いっぱい作ったから、みんなで食べよう!」


と越前は二人がかりで大きな鍋を持ってきて、椅子の上に置いた

「オープン!」

かぱっ、と蓋が開いた

と同時に辺りに異臭が立ち込めた


「な、何だこれぇ!」

英二がそう言いたくなるのも分かる

何故なら、鍋の中身は限りなく抹茶色。所々にあずき色や赤いものが見え隠れしている
何が入っているか分かったもんじゃない


「おい!何だこれは!」
「スープだよ」
「こんな怪しげな液体をスープと呼ぶのなら世の中の液体はみんなスープだ!!」
「味の決め手はようかんとマンゴスチン☆」
「ランブータンも入れようと思ったんすけど手に入らなかったっす」


ようかん、マンゴスチン………


『幾ら苦いからってそれはさすがにやばいんじゃなかろうか!あ、あと煮込む時は鹿じゃなくてようかんとかマンゴスチンとかランブータンとかをお勧めする!』











『幾ら苦いからってそれはさすがにやばいんじゃなかろうか!あ、あと煮込む時は鹿じゃなくてようかんとかマンゴスチンとかランブータンとかをお勧めする!』




あのメールか………!!


つーか最初、鹿煮込むつもりだったのかこいつら!!!




「さ、食べよう!」
「嫌だ!俺はこれ食う位なら乾汁飲んで倒れる方がましだ!!」
「折角高槻やあほべやキヨや真田のおっちゃんとかに食べてもらおうと思ったのに……」
まずその人選が怪しい!!


悪意が見え隠れっつーかむしろ隠れてすらいねぇよ!!



この後の記憶はあまり残っていない



………記憶が飛んだ誕生日は十数年生きてきて生まれて初めてだった