彼の名前は手塚国光
青春学園テニス部部長、兼生徒会長
月二回の代表委員会では議事の進行を務める
代表委員会とは各クラスの委員長と副委員長が集い、行事についての話し合いをする会議だ
「3年6組代表と高槻優人、来ましたぜー」
「副会長!手塚会長が脱走しました!!」
「何!?」
「………申しわけない…少々取り乱してしまって」
「手塚会長…どうしたんですか?」
「いや…それよりも、3年6組の委員長は………」
こっち向いて聞いてきたから、うーむ、と唸ってみる
なんだっけ。なんだっけあれ。あ、そーだそーだ
「なんかさー、委員長も大崎(実は副委員長)もエクトプラズムにかかったんだって」
なんかみんなポカーンとした顔しとりますがな!
「馬鹿。お前何度言えば分かるんだよ。エクトプラズムじゃなくてマイコプラズマだっつーの」
「そーそー。それですよ。そんでもってあたしらが代理になったのです」
「授業サボって中庭でかき氷はさすがにやばかったかな」
「でもいちごシロップも練乳も買ってたしさー」
「では会議を始める。今日の議題は秋に行われる学園祭についてだ」
無視ですか!アナタヒロインを無視ですか!!
「……落ち着け。そこら辺の子供なら一発で殺せそうな目をしているぞ」
そんなにひどいですか今のあたくしの顔
「ステージで行う演劇の演目を今度のLHRで話し合ってもらいたい。その前に幾つかここで候補を挙げておこうと思う」
「意見のある方は手を挙げて発言して下さい」
「はいっ!」
立ち上がって机の上に乗っかり身を乗り出して手を挙げる
手塚があからさまな溜め息をついた
「では、3年6組……椅子に座ってから発言するように」
「不思議の国のアリス!」
「………お前、それどんな話か知ってんのか?」
隣の高槻が聞いてきたから、うぃ、と返事してから答えた
「アリスがちっちゃくなって冒険するけど結局は夢オチな話でしょ」
「身も蓋も無い言い方だな」
「却下」
「うわ、マジで!?」
「次」
「はいっ!!」
「立ち直り早っ!!」
ヅカは一瞬こっちをちらっと見てから、すぐに視線を元に戻した
無視!?このさんを無視!?
「………他に意見のある者」
「はいはいっ!!!」
「………他に」
「はいはいはい!はーい!!」
「………………他」
「はいって言ってるでしょー!!!」
すこーん
『3年6組』と書かれたプレートをヅカに思いっきり投げつけた
なんか青筋ピクピクしてっけどオラ気にしないぞ!
「……さ、3年6組」
「きこりの話がいいと思います!!」
「泉の妖精の話ですか?」
「そう!副会長話分かるぅ!!」
私は机に乗っかって、泉の妖精の真似を始めた
「あなたが落としたのはこの金のふんどしですか?それとも銀のふんどしですか?」
「ふ、ふんどし!?」
「いや、俺が落としたのは赤のふんどしだ」
「赤!?」
「正直者ですね、ではあなたには金のふんどしも銀のふんどしも差し上げましょう」
「いらねぇー!!」
「うむ、たまらんな」
「真田!?」
うん、なんかみんな突っ込みが初々しいわね。フジコや高槻やリョマ子やあほべみたいな熟練の技っぽいものが無いわね
「却下」
「そんでもって真田はふんどしをおユキにあげちゃうわけですよ」
「却下と言っているだろう」
「そしたら幸村はそれを売って時計のチェーンを買うのです」
「3年6組の代表、席に戻れ」
「真田は自分の帽子を売って髪飾りを買うのです。そんでもってクリスマスにプレゼント!!」
「却下!!」
すここーん
「あだー!!」
手塚がさっき私が投げつけた3年6組のプレートと、生徒会長と書かれたプレートを投げつけてきた
どちらも見事に頭にクリーンヒット☆
「きさん何ばしよっとね!ドメスティックバイオレンスか!!」
「落ち着け!それは違う!!」
「え……?ど、ドスメティックロマンスだったっけ?」
「そういう違うじゃねぇよ……」
「えーと、そんなんより手塚ー!!お前ヒロイン様にその仕打ちは何だ!この毛塚が!!」
手塚が隣の副会長と書記のプレートを投げてくるので私も3年5組と3年7組のプレートで応戦
「お前のせいで会議が一つも進まないだろう!黙って人の話を聞く事位出来んのか!!」
「黙れこの常時微風野郎!!お前あだ名付ける時何て呼ぶか微妙に迷うんだよ!!」
あだ名で呼ぶ時なんて呼ぶか困るランキングトップ10には入るね!確実に!!
ちなみにそのランキングには乾や真田やあほべなんかも入ってたりするのですよ
その間にも大量のプレートが飛び交う
「手塚ー、てーづかー」
高槻が少し離れた机の上に避難しながら手塚を呼んだ
それからはっと我に返る
「す、すまない……すぐ会議に戻る」
「そんな事しなくてももう皆逃げてったぞ」
既に会議室には私と手塚、高槻の3人しかいなかった
「…………」
「あわわわ!!!」
手塚からスーパーサイヤ人みたいなオーラがシュワシュワ出ている
危険!危険!さんの中の危険信号点滅してる!!
「あたしのせいですかい!あたしが悪いのですかい!!」
「まあ余すとこなく全てお前が悪いだろうな」
「嫌ぁ!そこはフォローしてよ!!優しい人ってかいてゆーとって名前でしょアナタ!!」
「そんな事言ってる暇があったら逃げるぞ」
高槻が私の腕を引っ張り会議室の扉を開ける
「あ、手塚。一つ言い忘れたけど」
「さっき新聞部の部長が『スクープだ!』とか言いながら現像室に駆け出してったぞ」
それがスタートの合図だった
そこからは死ぬ気で追いかけっこでした、まる
あ、そーだ。一つ余談ですが
この次の日の学園新聞の見出しは『生徒会長御乱心!会議室で起こった悲劇!!』でした