俺の名前は坂田銀時。職業は……よろず屋やってます





歳は……えーと、まぁいいじゃねぇか。そんなもんに拘るのは小物である証拠だよ

歳数えんのめんどくさくて覚えてないとかそんなんじゃないよ、いやマジで




そんな感じで俺は今真選組の屯所に来てます

大串君構うのも悪くないんだけどさ。そんなのよりも興味沸くものがある訳ですよ


「いーもん作ってますねー」
「………やっぱあんた目聡いわ」










台所の小窓から顔を覗かせると、やっぱ来たか。と笑いながら引出しから新しく小皿を取り出す



男所帯のむさい中で一人だけいるわけですよ、女の子が
新人隊士の。無駄に綺麗なストレートヘアと無駄に綺麗な顔を持ち合わせた、そんな女の子

手には薄く延ばされた餅、隣のボウルにはつぶ餡、袋の中には柏の葉
深緑の皿に並べられたのは出来たての柏餅

「ちょーだい」
「はい。これあげっからトシちゃんに見つかんない内に帰んなさい」

小皿に柏餅を二つほど乗せ、それを窓から渡してくれた

「今お茶煎れるから待ってて。番茶でいい?」
「ああ」

柏餅に噛り付きながら返事をする

「どいつもこいつもまだまだ子供だね。こどもの日に柏餅食べたいなんて」
「馬鹿野郎、男は死ぬまで少年なんだよ」
「はいはい」

差し出された番茶は湯気が立っていて、飲むと丁度良い熱さだった
ずず、と音を立てて飲むと、は自分の分も茶を入れ始めた

「銀ちゃん、甘い物作るといっつも来るよね。何で?」
「何でだろうなぁ。俺の行く所に甘い物がある訳ですよ。きっと糖分の女神様が俺に糖分を与えようと道を指し示してくれてるんだと」
「糖尿病への道を着実に歩んでおりますね」
「真顔で毒舌を吐くのは止めて頂きたい」
「事実ですよ」

煎れたお茶を台の上に乗せて、はまた柏餅の続きを作り始めた
すぐに飲まない所を見るとどうやら猫舌らしい

2個目の柏餅を平らげ、皿を窓枠に乗せる

「ごっそさん。うまかった」
「お粗末様でした」

皿を下げ、また柏の葉を取り餅に巻く

「意外だよね」
「あ?」
「こんな人が時代を動かしてたって言うんだから」
「こんな人で悪かったな」
「一応褒めてるんだけどね」

笑いながら言っても説得力皆無なんですけどね
まあ可愛らしいから許す



「私も銀ちゃんみたいに他の人に影響を与えられるような人になりたいよ」


なんて可愛く言うもんだから








「……なってるんじゃねぇの?十分に」
「そーかぁ?」
「お前と話してる時の大串君は実に楽しそうだし、沖田クンも最近大人しいみたいだし」



いや、実際そうですよ

俺もお前の呆れたように見守ってくれるその笑顔があれば十分だ、とか柄にも無く思ったりするんだよ

銀さんにここまで言わせる存在って、結構貴重ですよ?






「銀ちゃん、声に出てる」
「え、マジで?」
「うん。やっぱりあんたって、馬鹿だわ」
「銀さんはアナタ限定で馬鹿になるの」
「よく恥ずかしげもなくそんな事が言えたもんだ」