「うらやましいなぁ」
「え」


内容など頭に殆ど入ってこないサッカー雑誌を規則的なスピードで捲っていると、その原因を作り出している俺の…その、こ、恋人がそんな事を呟いた。




「大介の目、ぱっちりタレ目の二重瞼。可愛くて羨ましいなぁと思って」
「か、可愛い…ですか……」
「ほら、私切れ長の一重だからさ。そういう真ん丸の大きな目って羨ましいんだ」

目の端を指で抑えながら、そんな事を呟く。



「で、でもさんの目だってかっこいいです」
「あのね大介、彼女にかっこいいって評価はどうなの?」
「す、すいません」
「いや、謝らなくていいけどさ」

さんは俺の反応を楽しむかのように笑う。


「で、でも」
「うん?」
「目を閉じてしまえば変わらないです」
「……なにそれ。一丁前に誘ってるの?椿のくせに」
「え?あ、いや!すいません、そういうつもりじゃ…!」

自分でも情けない位顔が赤くなっているのが分かる。
するとさんは、悪戯を思い付いた子供のような表情を見せる。


「いいよ。乗ってあげる」
「え…えっ?」
「折角のお誘いだもの、ご相伴に預かろうじゃないの」
「いや、え…えっと……」

どうしたらいいのかわからず戸惑う俺に綺麗な顔を近付け、目を閉じた。

俺は少し戸惑いながらも幾分か華奢な肩を掴み、口付けをした。



切れ長の目がゆっくりと開かれたその時、俺の背筋にぞくりと何事とも言い得ぬ感覚が走った。
全てを引きずり出されるような、その眼差しに射抜かれるような錯覚。




「……やっぱり、ずるいです」
「は?」



訝しげに細められたその目も、俺の心臓には毒なんです。