さん」
「なに」
「メアド教えてくだせぇ」
「25万円になりまーす。今なら電話番号をお付けして40万円でーす。消費税が別途かかりまーす」
カード一括払いで
いや待ってあんたなら普通に払えそうだから待って価格見直すから待ってちくしょうこの高給取りがァァァ!!


ワンブレスでそう言い切った私の携帯に総悟の手が伸びてきたので、私は高速で自分の携帯を保護した。








賑やかで適度に物騒なかぶき町は、今日も平和だ。
そんな感じで暇を持て余しているらしい沖田は、何故か私の携帯を狙っている。


「で、何でいきなりそんな話になったわけ」
「いやあ、そろそろ聞いても良い時期になったんじゃないかと思ったんでさぁ」
「私とあんたの間に一体どんな進展があったというんだいはははははこれは傑作だ」
「ひでぇやさん、俺が雨の日にフラれて泣いているあんたを2つの意味で慰めたのを忘れたんですかぃ」
「その段階踏んでくフラグは主にあんたの脳内で繰り広げられていたと言うことを自覚すべきだ」
「マジでか」
「現実では踏むどころか立ててすらいないね。いや、立てさせる気もさらさら無いけどな!」
「相変わらず辛辣でさぁ。でもそこが好きですぜ」
「ありがとよ全く嬉しくねぇや」


適当にあしらって仕事に戻ろうとすると、肩を掴まれる。

「何。まだなんか用?」
「番号とアドレス」
「どんだけ聞きたいの。何に使う気だ」
「何にって……知りたいんですかい?」
「結構です言わなくていいですどうせろくでもない事だってわかってるし」

携帯電話を握りしめ、ぶんぶんと首を横に振る。


「よこせ」
「嫌だ!」
「見せろ」
「嫌だってば!!」
「くっちゃべってる暇があるなら巡察でも行って来やがれ給料泥棒」

背後から低い声が聞こえてきたかと思うと、総悟の尻にに強烈なケツキックが炸裂した。



「うごああああ!!これ以上ケツが割れたらどうしてくれんだ土方コノヤロー!!」
「知るか。おい、何油売ってんだ。ちょっと来い」
「は?でも今はうちの隊長から待機命令が出て……」
「副長命令だ。隊長命令より優先させろ」

強引に腕を引っ張る力に抗えず、私は後から着いて行かざるを得なかった。


「いつも付き纏われてんのか、お前」
「いやまあ付き纏われてるというかからかわれてるというか……何はともあれ、助かりました」
「………仕事の時は鋭い癖に、変な所で鈍いなお前」
「味覚の鈍い副長に言われたくないです」
「あ?なんか言ったか?」
「いいえ何も」

誤魔化すように愛想笑いを返すと、土方さんはポケットから携帯を取り出した。
そこにくっついているマヨネーズのストラップはもはやベタすぎるので敢えてツッコまんぞ。絶対。


「何かあったら駆けつけてやる。番号教えろ」
「なに、真選組では私に電話番号聞くのが流行ってんの?随分とニッチな流行ださっさと廃れろ
「悪いようにはしねぇ。あいつ相手だと一人じゃ何かと危ないだろ」
「悪いようにはしないって言葉、悪いようにする人しか使わないよね」
「うるせぇ。いいからさっさと教えやがれ」

不機嫌そうに眉間に皺を寄せた土方さんに、私はぴっと手の平を差し出す。


「50万円になります。今なら番号をおつけして75万円でーす」
何で俺の時は値上がりしてんだよ!!
おおっとさりげなく盗み聞きしていたねこいつはなかなか悪趣味だ!


入ってくるタイミングが絶妙すぎるとは思っていたが案の定覗き見してたみたいだ。



くそ、現金一括払いできっちり払ってやろうかコラァ!!
いや待って副長の財力甘く見てたわ価格見直すから待ってぇぇぇ!



そんなこんなで私の個人情報はどうにか死守しました。











「あーあーあーもう、嫌になるわ。副長と隊長のニッチな趣向に辟易するわ」

ベンチに腰掛けて愚痴る隣には、天然パーマのよろず屋。
手土産に渡した団子を口に運びながら、適当に私の話に相槌をうつ。

「何で聞きたがるかね。私の携帯番号」
「分かってる癖に」
「分かってるから理解できないんだよ。」

日本語がおかしいのはこの際置いておくとして。


「まあ、銀さんは惚れた女の嫌がる姿に性的興奮を覚える…こともあるが、無理矢理聞き出したりしないからね」
「うんありがとう知ってるよただ単に携帯持ってないし電話代払う甲斐性が無いくらい

なんかどや顔でそんな事言い放つもんだから、笑顔で返してやった。


「お気に召しませんか」
「お気に召しませんね。だいたい顔が好みじゃないんだよ。3人とも」
「ほー、じゃあどんなのが好みだっつーんだよ」

銀ちゃんが興味あるような無いような微妙な反応を示す。
好みの顔、と言われ私は一人の男の顔を思い返し頬を染める。







「………山崎…」
そんなニッチな趣向誰が理解を示すんだ