「んぁー!良い天気だねーこりゃまた!!」

桜の樹によじ登って、花見酒……とまではいかないけどコンビニで買ってきたプリンシェイクを一気飲み
すごく喉に詰まる。けど他に飲み物なんか持ってない。ていうかこれは飲み物じゃなくてただの潰れたプリンだ。


『これから第70回、青春学園中等部入学式を始めます』
「あ、始まった」

教頭の声が校内に響き渡る。私はサボタージュですよ。
入学式って面倒だし、出たとこで何の特典も無いし。
トイレットペーパー1ロールとかクロワッサン3つとか出たら絶対参加するのに。生活の為に。


「でも後でクラス割りくらい見ておかんとなぁ。今年は誰と一緒なんだろ」

ちなみに去年はフジコと大石と一緒のクラスでした。
これで今年も一緒だったらフジコとは3年間一緒です。腐れ縁腐れ縁。


「あー、でも手塚の挨拶は見たかったかも」

何となくだけど。うん。


「今からじゃ間に合わないよねー……ぇをうわぁ!?」




油断していたら、座っていた桜の木の枝が折れた




桜の木の枝は折れやすいから注意しようネ☆





ってそんな事今更言っても遅い


「ほわぁぁぁ!?」
「うわっ!」




どずんっ




「………Oh、少年ナイスキャッチ☆」
「……すっごい不本意なんだけど」
「そりゃそんなとこで居眠りこいてる方が悪い」
「そんなとこに登ってサボってる方が悪い」
「アチャー☆」

てへっとか言ってごまかしてみた

相変わらず学ラン姿の少年はぶすっとしたままこっちを睨んでいる。


少年の腹の上に落ちたみたいです、私
すごいね、折れてないんだね、無事なんだね!


私が軽いのか少年の腹筋が六つに割れているのか。
いや、意表を突いて七つくらい?

「えー、何々?新入生?それとも二年?」
「……………」

少年は一言も話さない。
うん、まあいいよ。気にしないし。

「私ね、今年で3年なの。よろしくねー。てか私の事知ってるかい?」
「アンタの事なんか知らないし知ろうとも思わない」
「まぁまぁそんな事言わんと!君新入生だね?」
「…だったら?」
「いやー、なんつーかこの学校で私知らないなんて珍しいなぁと思って」
「あんたそんなに有名人なの?そうは見えないけど」
「有名よ私?道端で出会ったら指差されるくらいは有名よ?」

名誉か不名誉かは別としてネ!




「………あり?」

さっきまでべらべら喋ってて気付かなかったけど少年の横にラケットバッグがあるじゃないですか!


「プリティーボーイはテニス部入るの?ちっちゃい時からテニスやってたの?ていうかちっちゃいね。プリティーだね!」
「プ……余計なお世話だよ。何、俺がテニス部入っちゃ悪いの?」
「いーんや、良い事ですよ。ただね、テニス部入ると絶対私とお知り合いになるよ」

私がそう言うと、プリティーボーイは眉間に皺を寄せた。
ああもう、眉間に皺寄せてもプリティー!!

「……女テニに入る気は無いんだけど」
「あ、それはね……いや、話したら長くなるから話さないわ。めんどい。ちゃんくそめんどくせー事嫌いなのよ」

どっこいしょー、とジジ臭いんだかババ臭いんだかわかんない掛け声を入れて立ち上がる。


「取り敢えず名前だけね。私。その内また会うだろうからヨロシクなー。君の御名前は?」
「…越前リョーマ」
「オーケイ、リョマ子宜しくー
「え!?」
「………ー!」
「あ、不二ッコだ!そんじゃリョマ子、まったねー♪」
「え、おい!ちょっと!」
「不二ー!不二ッコー!!あ、おい!しっかり目が合った後に目をそらすんじゃないよ新学期早々フルテンションで絡むぞコノヤロー!!ふじっこのおまーめちゃんっ!!!


小粋にスキップと前回り受け身をかましながら私はその場を去っていった。



そして入学早々訳の分からないハイテンションな女を腹でキャッチした上不名誉なあだ名を付けられたリョーマは、これから先の自分を想像して少し寒気がした