「ほら、ここがテニス部だよ」

引きずられること5分、俺は青学のテニスコートにいた

「(偵察っつっても……俺手塚さんしか興味無いからなぁ。偵察したくらいで手塚さんの事分かるとも思えないし………)」

「おーい!てっづかー!!」

いきなりの御対面!?

って言うか偵察の意味全く無っ!!


、遅刻だ」
「そんな事よりほら、立海大付属のキリキリマイが遊びに来たよー」

何か色々間違ってますよ!?

そんな俺のツッコミをよそに、手塚さんの視線はこっちに向いていた
な、なんか言っておかないと……

「あ、あんたが手塚さん?いやー、ちょっとお手合わせしたいなぁ」
「部外者は出て行け」

即答

「おいコラくせっ毛!!うちの部長に失礼なことしてんじゃねぇよ!!」

後ろからイモジャー着てるへんなバンダナの奴が怒鳴りつけてきた
何であんな緑のバンダナしてんだろ

「とっとと出て行けよ!!」

何だか本能の赴くままにって感じで俺に向かってサーブを打ってきた
当たると嫌だから適当にかわしとくか

とか思ったその矢先



べしっ



サーブを叩き落とした!?

「もー荒井様!人にボール打ったら駄目っしょー!」

そう言ってはボールをアライと呼ばれた奴に投げ返した

剃刀カーブで



カクンカクンと規則的に曲がり、さっきの奴の頭にクリーンヒットした


先輩!何で剃刀カーブ出来るんすか!?」
「いやー、昨日桃に借りた漫画見たら惚れちゃってね、こっそり練習したのよ」

………念のため言っておくが

剃刀カーブは間違っても一日で出来るもんじゃない



「てな訳で手塚」
、遅刻した罰だ。グラウンド二十周」
「いやだから」
「グラウンド二十周だ」

有無を言わさずの手塚の言葉に、は目に涙を一杯溜めた
多分嘘泣きだろうが

「て……て………手塚のバカチーン!!て言うかドテチーン!!!」

意味不明な台詞を残したまま、は俺の腕を引っ張ってもと来た道を走りだした



「うわーん!手塚なんか大根と一緒に煮込まれてなんかいい味醸し出してればいいんだー!!」
「いや、ちょっと落ち着いて……」
「ダシ取るだけ取られて出涸らしとして三角コーナーにポイッチョされればいいんだー!!」
「全く意味が分からないんですけど」

多分本人も特に意味がないとか言うのだろう






「あ、そうだキリキリマイ」
「何すか」

もう正しい名前を呼ばせるのは諦めた

「もうそろそろバス来るよ?」
「あ、そうなんすか?そしたらまた」
「あちきも行くぜよ!」





「………へ?」
「キリキリマイが青学の偵察したから今度はこっちが偵察する番なのだよ!」

筋が通ってるようで実は色々おかしい

「さぁ、いざいざ向かわん柿の木中!!」


………もうどうにでもしてくれ






「あーっ!赤也!!」
「どうにか間に合いましたか」
「遅れてすんません」

どうやら俺の試合順番は後に回されたようだ
ほっと一安心したその直後

「赤也!!」
「あわわっ!」
「まったく、お前はたるんどる!!」

もの凄い形相の真田副部長が!!

「だいたいお前は………
「わーっ!わーっ!すごーい!!」

真田副部長のお説教が急に止まった
思わず閉じていた目を開けると、が真田副部長をまじまじと見つめていた

「ねっねっ、立海ってOB出しても大丈夫なの??」

うん、の言いたいことは何となく分かる

、真田副部長は3年………」
「えっ、マジ!?」
「なぁ赤也、こいつ誰だ?」

ブン太先輩が俺に聞いてきた

「えっと……何て言えばいいのか………」
「こいつの制服、青学じゃねぇの?」

俺が返答に詰まっていると、がはいはいっ!と勢い良く手を挙げて喋り出した

「青春学園三年六組、14歳でっす!テニス部でミクスドD1でそれなりに強いって事になってまーす!!それからねぇ……」
「ははっ、おもしろい奴じゃのぅ」
「どもども!えーっと……」
「仁王や。仁王雅治」
「よろしくニオ!」

はっはっは、と何だか男前な笑い方をしながら仁王の背中をバンバンと叩いてる
仁王先輩も満更でもなさそうな感じだ

て言うかいつの間にかレギュラー大集合!?

結局この後、練習試合が再開された
最初のうちはいた筈なのに、はいつの間にかいなくなっていた


………一体あの人は何だったんだろう