脳震盪起こしてぶっ倒れてたその間に
何だか大変なことがあったみたいです
「えっ!?柿の木中が負けた!?」
「まさか。都大会出場候補だぜ」
「でも掲示板に……」
掲示板を見てみると、相手はノーシードの不動峰中だった
しかもストレート勝ち
「ねぇフジコ、不動峰中ってそんな強かったっけ?」
「去年の新人戦直前に暴力事件起こして出場禁止になったとこだよ」
「へー、ボーリョクねぇ……」
なんか部長以外は全部2年生らしい
去年あそこの2年に(今は3年って事か?)変な言いがかりつけられたんだよなぁ
フライングクロスチョップかましてその勢いで逃げてきたけど
「次のオーダー表だよ」
「わーい!見せて見せて!!」
今回のミクスドは桃とかー……
相手は…橘桔平、橘杏。
「桃ティロ、これって兄妹かな?」
「そうっすよ」
「……随分と自信ありげに言うねぇ。もしかして知り合い?」
そう聞くと、桃は長いこと唸って珍しく考えてからこう言った
「まあ知り合いと言えば知り合いっすね」
「なになに?彼女?」
「ち、違うっすよ!」
「なーんか怪しい!どもってるし!ねーみんな聞いて聞いて!桃ってばさー」
「マジで違うんですって!先輩!!」
そんなアホなやりとりをやっていると、あっと言う間に試合の時間は近付いていた
パワーアンクルを外せと言われるくらいだから、一筋縄ではいかないだろう
「これから決勝戦、青学対不動峰の試合を始めます!」
審判の声がコート上に響き渡り、両校の選手はお互いに礼をした
そのまま視線をあげると、私の目に衝撃的映像が映る
「宜しくお願いしま……ああああああっ!!」
「、どうしたの!?」
「げ……」
「げ?」
「ゲゲゲの鬼太郎がいたぁぁぁ!!!」
「は?」
指をカタカタを振るわせながら指差した先には案の定
「あぁ!お前さっきの!!」
「ゲゲゲの鬼太郎はほんとにいたんだー!」
「鬼太郎じゃねぇ!神尾アキラだ!!」
「あー、さっきから『鬼太郎がいたぁ!』とか言ってたのはこいつの事だったんすか」
「目玉は!目玉の親父はどこ!?」
「!!」
手塚に怒られちった☆
多分帰ったらかなりのペナルティが待っている事でしょう。アチャー!
「ミクスド、試合開始!」
「桃、ちょいと耳を貸しなはれ」
「何すか?」
「あんね、ごにょごにょごにょ………」
桃に作戦提示したとこで、私はサーブの位置についた
「いくよ!」
ボールを空高く上げて、高い打点からサーブを打ち下ろした
相手は女の子。多分取るのはきついと思う
パン!と良い音が鳴り、ボールは後衛の私の方へ飛んできた
「桃、準備オッケー!?」
「いつでも良いっすよ!」
桃の返事を聞くか聞かないか位の早さで、回転をかけたスピードボールを後衛の女の子の方へと打った
今打ったボールは回転の向きを変えないと回転の性質上絶対にロブになる
今度は少し鈍い音がして、ロブのボールが上がった
そこに桃がジャンプ
「いっけー!ダンクスマーッシュ!!」
おぉ、飛ぶ飛ぶ。
相変わらず桃の飛びっぷりはすごいなぁ
アンクルで鍛えた分更に飛んでるような気がする
桃のダンクスマッシュはコートにボールの跡を残して、フェンスに当たった
「先輩、ナイスっす」
「桃もナイス。でも何で途中で軌道を変えたの?そのまま打ち下ろせば確実にフェンスに突き刺さってただろうに」
「いや、あの………」
「……………わかった」
桃が視線を送った先で、全てが分かった
桃が途中で軌道を変えたのは、先に女の子がいたからだ
ぶつかって傷でも付けたら大変だとか思ったんだろうか
……桃って実はフェミニスト?
いや、むしろ好きな女の子だからとかそういうの?
「でも桃、油断は禁物だよ」
「わかってますって」
「ほんとかなー?相手の子結構可愛いよねー」
「だからそんなんじゃないっす!!」
それから30分後
「ゲームセット、ウォンバイ青学桃城・!7−5!!」
「あー!終わったー!!」
汗だくになりながらコートから出て、青学側のベンチに戻るとベンチに寝そべった
ぐでーっとなっていると、視界に不二が入ってきた
手には飲み物とタオルを持っている。そんなん一年にやらせりゃいいのにー
「、お疲れ様」
「ほんとお疲れです。5ゲームも取られるなんて思ってなかったよ」
「相手も結構強かったようだな」
「やっぱ乾もそう思う?私もさっき桃と言ってたんだよね。あの大仏さんめっちゃ強いの!」
「急増コンビのコンビネーションの悪さを突いてきたようだな」
「それに気付くのもすごいよね」
ふーっと一息ついてからストローから飲み物をぐーっと飲む
「さて、はちみつレモンでも食うかな」
「え?そんなもん作ってきたんすか?」
「おう。自家製さ」
私はタッパーからごろりとレモンとチューブ式の蜂蜜を取り出すと、レモンをガリガリと齧った
そして蜂蜜をダイレクトで吸う。
「ほら、自家製」
「口の中見せんな!」
「おふっ」
高槻に殴られた拍子にレモンが口から飛び出した。
「試合どうだったの?」
「僕達の試合は棄権負け」
「え!?なして!?」
「タカさんが相手の技受けて手首痛めたんだ。だから今病院に行ってる」
タカさんが病院行くほどの技なんてよっぽどのもんなんだろう
大丈夫かなー……
試合は結局ダブルス1、シングルス3、シングルス2と勝利し、青学の優勝となった
まあリョーマが瞼パックリやっちゃったりもしちゃったんですが
その頃
神奈川県大会地区予選決勝
「月間プロテニスさん、何か新情報ってあります?例えば……東京の手塚さんとか」
「相変わらず手塚君は地区予選には出る幕は無かったみたいだね」
「へー温存ってやつっすか……あ…あの………」
「ん?」
「ミクスドは…?」
「ああ、さんかい?彼女自体は全国区だからね。地区大会くらいで負ける事は無かったよ」
「……そっすか」
「どうかしたのかい?」
「い、いえ!何でもないっす!!」
閉会式が終わって、私はリョマ子の付き添いで病院に来ていた
そんな重大な怪我でも無いようなので良かった良かった
それから車で竜崎先生に送って貰ってるとこです
「ほら、着いたよ。そこ入ってみな」
「それじゃあお疲れ様でーす!桜乃ちゃんもまたねー!!」
「あ、お疲れ様です!」
ドアを閉めると、車はエンジンを吹かして走り出した
そこに残されたのは私とリョマ子
「………寿司屋」
「スシだね。入ろうよ」
ほらほら、とせかすと、リョマ子は寿司屋の引き戸を少しだけ開けて、閉めた
「何やってんの」
「いや、ちょっと……」
「ほら越前、入った入った!」
今度は引き戸から手が伸びてきて、リョマ子の腕を掴んだ
「も入りなよ」
「あ、フジコ」
中からフジコも顔を出して私を呼んだ
「はい、と越前の分」
「何スか、このお茶……」
渡されたのはほこほこと湯気が立つ番茶
私は紅茶が一番好きかなー(聞いてない)
「今日はみんなお疲れさん!オジさんのおごりだ、どんどん食ってくれ!」
「えっ、このお寿司全部!?」
テーブルに並べられたお寿司の山!
いくらにまぐろ、とびっこ、たまご………
「それじゃあ、地区予選優勝を祝して、乾杯!」
「かんぱーい!」
「、こっち空いてるよー!」
「じゃあ菊の方行こうかな」
靴を脱いでテーブルに座ると、お寿司が入った入れ物が飛び込んできた
「お寿司って食べた事無いんだよねー」
「ええ、マジ!?おいしいから食べてみなって!俺はアナゴが好きかなー」
「アナゴって、今薫ちゃんが食べたやつ?」
「ああっ!アナゴ無くなってる!!」
菊が薫ちゃんに文句を言ってる間に、私は取り敢えずオレンジ色のおいしそうな切り身が乗ってるお寿司を食べてみた
「んー!!めっちゃうまー!」
「それはサーモンだよ」
「さーもん……」
さーもんさーもんさーもん、よし、覚えた
それから色んなお寿司を食べたけど、さーもんとさんまがおいしかった
菊がワサビ寿司食べたり、手塚が先生に間違えられたりと色々面白かったりしました
途中で私も手塚の寿司にワサビをべったり塗りつけておいたのですが手塚は顔色一つ変えずに食べました
ちょっと脂汗が滲み出ていましたが。エヘ☆
こうして、長かった地区予選の一日が幕を閉じたのです