「えー、お前達三年は再来週から三者面談をする。そのプリントは忘れず親に渡しておくように。いいな!」
皆のはーい、とやる気のない声が響き、その日の授業は終了した
「ああ、」
「何ですかね。あたしゃあこれからヅカのご機嫌とりをしなければならないので激しく忙しいんですが」
「また何かやったのかお前」
「深くは追求せんでください。で、どーしたんすか?」
「お前、親日本にいないんだったな?」
「えー……多分。もしかしたらどっかいるかもしんないけど」
「連絡つかんか?一度くらいは親と話しておきたいんだが」
「あー、どうっすかね。一応家の方に連絡は入れときます。でも来るとしたら世界中ほっつきあるいてるむさいオヤジの方ですけど」
「お前は親までそんななのか」
「この親にしてこの子あり」
「自分で言うな」
一方その頃、コート付近では
「………桃先輩」
「何だ?」
「あそこにいる人って誰っすか?」
リョーマが指差す先には一人の男
テニスコートをフェンス越しにじっと見ている
「誰かの知り合いじゃねーの?兄弟とか」
「桃先輩知らないんすか?」
「見た事ねーなぁ。ちょっと話し掛けてみっか?」
「そうっすね。このまんまじゃ落ち着かないっす」
桃とリョーマは男に近寄り、話し掛けることにした
その男は近くで見ると派手さが目立った
髪は茶髪で、ピアスが複数空いていて、歳の頃では二十歳から二十五歳程の男だ
サングラスをしている為、眼は見えない
「すんません」
「おぅ、どーしたい」
「うちのテニスコートになんか用っすか?」
「まあな。ここって青春学園だろ?」
「そうっすけど」
「女テニにって奴いないか?」
「………先輩っすか?」
「お、知ってんの?そー。ちゃんさ」
意外な名前が挙がり、二人は顔を見合わせた
「あそこにいるんで呼んでみますか?」
「え、どこ?」
「あっちの方で固まってるグループの女の人っす」
「あー、こっからじゃ話しにくいな。そっち入ってもいいか?」
「(………どうするんすか?)」
「(さすがに手塚部長に怒られるんじゃねーの?)」
「部活中だぞ。何をやっている」
「あ、手塚部長」
「この人が先輩に会わせろって言ってるんですけど」
「失礼ですが、に何の用で?」
「あー、えーとねー…………………………………………………………テニス。うん、それだ。テニスの事でちょっと話があるんだよ」
何だ今の不自然な間は
「て事があったんだよねー」
部活が始まり、今は二つのコートでタカさんと海堂、ヅカと大石が試合形式の練習をしてます
私は一番最初に菊とやって暇なんですよ
もう一個のコートで同時にやってた不二と高槻の四人でくっちゃべってます
「お前の親って見た事ねーぞ」
「多分うちの学校の人は誰も見た事無いと思うよ。私もここ2、3年見てないし」
「の父ちゃんって何やってる人?」
「小説家」
「小説家ぁ!?」
そんな驚くことかね、小説家って
まあ確かに珍しい職業ですが
「主に推理小説とか書いてるんだよね。特別有名でもないけど確かなんとか賞取ったことがあるとかないとか」
「曖昧だな」
「お母さんは普通の人?」
「うん、普通の母さんだよ。ちょっと怪力だけど」
「怪力な時点でちょっとじゃないよ」
「大丈夫!車に轢かれそうになった時車蹴飛ばして跳ね除けるくらいの怪力だから!」
「どんな筋肉してんだよ」
因みにその時、車の人が全治三ヶ月の重傷を負いました
母さんは無傷。丈夫だね!
「両親ともおかしい人だったんだね」
「まあ、娘こんなんだし」
「自分で言う事じゃないにゃ」
自分で言うからこそじゃないかこういうのは!
「兄弟はいんのか?」
「随分聞いてくるね。どったの?」
「いや、何となく気になって」
「えっとね、きょーだいは兄ちゃんと弟が各一匹ずついるよ」
「各一匹って……」
「弟はサッカーやってて東京にいんの」
「青学じゃないの?」
「うん。どっか別の中学。今中1だったかな?フツーすぎてつまんねークソガキですぜ」
「それは随分と苦労しただろうね」
「何がさ」
「まともなのって弟だけみたいだし」
「あたしだってまともさ」
「黙れ珍獣」
酷!!
「………ありゃ?」
「ん、どーした菊丸」
「なんかあっちの方でもめてない?」
「どこだ?」
「ほら、あっちのコートの方」
「ほんとだ」
「行ってみようか」
私達は小走りで人が集まってる方に駆けていった
「ねーねー!どうしたの!?」
「あ、先輩」
「!元気にしてたかー!!」
誰かがフェンス越しに手を振っている
「あー!」
「、この人誰?」
「やぁリンダ、君はお腹のたるみが気になったことはないかい?」
「ボビー、私最近食べ過ぎて3キロも太っちゃったのよ」
「そんな怠け者のリンダにはこれ、アブト●ニクス!これさえあれば楽に腹筋が鍛えられるんだ」
「Wow!ステキよボビー、これで元のスリムな体型に戻れるわぁ」
「割れた腹筋はビーチで注目の的さ!リンダも今すぐモテモテになれるチャンスだよ!」
「でもこんな素敵な物ですもの、お高いんじゃない?」
「なんと今なら税込み12800円さ!」
「しかも送料はジャ●ネットが全額負担ですって!」
「今なら菜切り包丁や果物ナイフまで付いたこの万能包丁五点セットも付いてるんだ〜」
「父さん!!!」
「娘!!!」
「父さん!?」
「て言うか今の不自然すぎる親子会話と言うか深夜の通販番組みたいな会話は何だ!?」
私に手を振っていたのは紛れもなく私の父親
「先輩!何言ってんすか!こんな若い父さんがいる訳……」
「だって父さんは父さんだもん」
「どーも、の父親の恭介です。娘がいつも世話になってます」
「この人もうすぐ50だよ。結構見た目は若いけどねー」
「結構どころの話じゃねぇ!!」
「(妖怪!!)」
「(妖怪だ!!)」
「どう見ても見た目二十代だよ……」
まあよく小さい時は近所の兄ちゃんと勘違いされてましたけどね!
「どうしたの父さん!いきなり日本に来るなんて」
「いや〜、お前も受験生だし先生と一回くらいは話しておいて方が良いかと思ってな」
「いきなり父親らしいねぇ」
「そうだろ?俺今めっちゃ父親っぽくねぇ!?」
「うんうん!完璧な父親だわ!」
「てな訳でそこの流れ毛君、職員室はどこだい?」
「流れ毛!?」
それは紛れもなく手塚の事だった
やるなぁ父よ、知らないとは言え手塚にそんな事言うなんて!
「………………職員室は二階の突き当たりです」
「ありがとう流れ毛君!さぁ、ちゃっちゃと行こうか」
「ええっ!?今から!?」
「今行かずに何時行くんだ」
「これから部活なんだけど」
「構わん。行け」
「え、でも……」
「竜崎先生には俺から言っておく。気にするな」
手塚からは『早くどっかに連れてけ』って感じのオーラがビシビシと伝わってきました
怖いので言うとおりにしておきます
そんな感じで、私は早めの三者面談をすることになった