「はい」
「誰だその人は」
父です


3年6組の教室は、微妙な空気に包まれた





ー、人を騙すにしてももう少し考えろ。常識で考えてお前の父親がこんなに若いわけ無いじゃないか」
「父親なんだってば」
「嘘つけ。その辺の兄ちゃん連れてきたんじゃないのか?」
「何てこと言うんですか!」

父さんはダン!と机を叩いた

サラサラの黒髪!整った顔立ち!白い肌!これは紛れもなく俺と陽子さんの愛の結晶です!!

寒っ!!

あ、よーこさんってあたしの母さんの事ね

こんな美しい子供の父親が類い希なる美形であって何がおかしい!
「………本当にお前の父親のようだな」
「分かって頂けたようで嬉しいです」
「この一足飛びな会話がお前とそっくりだ」

悪かったね。人の話を聞かない子で

「で、お父さんは何のお仕事を?」
「小説家です」
「あ、ほんとだから」
「そうか……この資料、嘘ばかりだと思ってたんだがそうでもないんだな」
「うん」

最初提出した時一度突っ返されたからねぇ

、お前進路どうする気だ?」
「えーっと……テニス推薦もいいんだけど、このまま青学の高等部進んでもいっかなーと思ってます」
!違うだろ!!お前中学卒業したら俺の嫁になるって言ってたじゃないか!!」
「父さんは話がややこしくなるから黙っててよ」

て言うかそれ、幼稚園だか小学校低学年だかの話だから!
珍しいなぁ、私がツッコミにまわるのって

「実家はアメリカなんだろ?戻らないのか?」
「あー……帰っても人こき使う母さんとシスコンのアホな兄ちゃんがいるから帰るつもりは無いっす」
「戻ってくればいいじゃないか。今は俺もアメリカで暮らしてるし」
「尚更戻りたくないわそりゃ」

泣きながら机に突っ伏してる父さんは放っておくとして

「高等部ってテニス推薦ありますよね?」
「あることはあるが……」
「実力足りないっすか?」
「いや、一度全国制覇してるからそれは無いが、成績がな……良い教科と悪い教科の落差が激しすぎる」
「だって国語とか古典とか難しいんだもん」

英語と実技教科は常に5だけどね!
国語と古典はいっつも赤点!アイター!
あ、あと日本史もギリだなぁ……

「まあ、テニス部の3年は成績優秀者が多いから手伝って貰え」
「えー」
「苦手教科はせめて平均くらいに上げておけ」
「はいはーい」
「じゃ、これで終わりにしとくか」

父さん、まるっきり役立たずでしたね








「よし、三者面談も終わった事だし、帰りなよ父さん」
「一泊ぐらい泊まってったっていいだろ?久しぶりにの手料理でも食わせてくれよ」
「五万」
「高いな」
「一宿一飯の恩義は高くつきますよ?」

父さんだから尚更な!


ちなみに部活は父さんがいるので休ませて貰えました
手塚、よっぽど父さんに流れ毛って言われたことショックなのかしら




「おー、ここがの住んでるマンションか」
「ここって叔父さんの持ち物なんだっけ?」
「そうそう。脅したら部屋一個貸してくれたんだよ」

脅すなよ

父さんと一緒にマンションの横をぽくぽくと歩いていると、横をロールスロイスが通り過ぎていった
………あれ?止まった

中から誰かが出てくる


「って跡部!?」
!」
「ど、どどどどうしたの!?」
「これから食事でもどうだ?レストランを予約してある」

どうしてこういう時に来るかなぁ!この男は!!

恐る恐る横を見ると、顔が釣り漫画みたいに劇画調になってる父さん
オギャー!!

……このハネ毛は誰だ!!」
「あの、その、えーと……何て説明したらいいのかなぁ」

友達?ライバル?他人?

「あ、そう、知り合い!知り合いの跡部クンです!」
「テメー誰だ。の隣に立っていいのは俺だけなんだよ。アーン?」
「俺はの父親だ」
「はっ、こんな下品な奴がの父親?笑わせんじゃねぇよ」
「跡部、ホントのことだから」

私が言うと、跡部はマジで!?って感じの顔をした

「お前みたいな奴がの側にいるなんて気に入らねぇな」
「でも跡部はテニスすっごく強いんだよ」
「こんなあからさまにマジックで書いたような位置にホクロがある奴なんて信用できるか!」
「父さん!」
「しかも出るたび出るたび微妙に移動してるホクロなんて書いてるに違い無いじゃないか!!」
「父さん!それは禁句だよ!許斐マジックなんだから!!」

確かに出るたび微妙に位置違うけど!
それは跡部のせいじゃなくておとうさんの許斐さんのせいなんだから!!

「テメェ、首洗って待ってろよ!明日からテメーの通る道全てにバンジステーク仕掛けてやるからな!」
「はっ!やれるもんならやってみやがれ!そんな事したらお前黒い人に連れ去られるんだからな!!」

バンジステーク……落とし穴の中に竹槍びっしり。落ちたらグサリなトラップ

跡部の財力ならほんとにやりそうだよ、バンジステーク………
て言うか父さん、黒い人って誰ですか

一頻り言い合って威嚇し合った後、跡部は舌打ちをしながらロールスロイスで去っていった

、あんなキモいナルシスト、俺は認めないからな!!」
父さん、それ同族嫌悪って言うの知ってる?

あんたも十分キモいナルシストだよ……しかも親バカだし

あーなんか今日は無駄に疲れた
普段やんないツッコミを無駄にやったからかね



それから父さんは3日間ほど粘り、バンジステークを避けながらもアメリカに帰っていきました



………いや、むしろ帰らせました