本日、私はスポォツショップなぞに来ております
いや、違います、違うんですよ
いくら手違いとはいえ敵チームとして試合に出た処分としてパシられて備品の買出しに駆り出されてるわけじゃないですともさ
うん。違う違う
「へいおっちゃん、玉子一つ!」
「お、最初に玉子を頼むとは姉ちゃん、通だねえ……って違!君、電話で言ってた青学の子だろう?」
「……はい、そーです」
おっちゃん何気にノリ良いなぁ!
「はい、頼まれてたグリップテープとガット、それとテニスボールにルールブック、スコア表に……」
「こ、こんなにあるの!?」
「あれ、聞いてなかったのかい?」
て、手塚ぁー!オメェ末代までたたってやらぁー!!
てかそんな事よりこれどーすっべ……何回も運ぶのはめんどいからやだし……あほべに頼んで車出してもらうか?
いっそのこととびきりの高級車を
きっと次の学園新聞のトップはいただきさ!
「テニスコートにロールスロイス出現!!」なんつってな
本気で手塚に殴られるな
しかもパーじゃなくてグーで
「おじさん、運ぶの手伝ってやろうか?」
「いやー、それも何か悪いしなー……」
私がうぅむ、と唸っていると、店の自動ドアが開く音がした
「いらっしゃい」
「やっほーおじさん!グリップ注文してたの入った?」
「ああ、昨日入ったよ。ちょっと待ってて」
………この軽い口調、まさか
「あれ、青学のちゃんじゃん!」
振り向くと予想通りのオレンジ頭
「おあーん!!!」
「うわっ、なになに!?」
「キヨー!キヨー!きよしゅみー!!会いたかったよぉぉぉぉぉぁぁあん!!」
「えっ、そんな俺に会いたかったの!?嬉しいなぁ!」
「荷物持ち手伝ってー!!」
「………え?」
キヨは予想通り面食らった顔をした
「なーんだ、そういう事かぁ」
「すまんねぇきよしゅみ」
「全然構わないよ!女の子に重い荷物持たせるなんて俺には出来ないからね」
うむ、根っからのパシリ体質か?
いや、それもなんか違うなぁ。きっと男だったら手伝わないだろうし
「この後さー、どっか行かない?」
やっぱり
石●純一系なのかなぁ、この人
でも手伝ってもらったしお礼くらいせんとね
「いいよ。どっかでなんか奢るよ。お礼に」
「マジで?ラッキー♪今日の占い、ラブ運◎だったんだよね」
………これってラブなのか?
「ちゃんてさー、占い信じる方?」
荷物を置いてファミレスに向かう途中、キヨがこんな事を聞いてきた
「うん、信じるっちゃー信じるかな。よくケータイで占いとか見るし」
「へー、どんなの?」
「キヨのも見たげるよ。何座?」
「いて座」
携帯で占いサイトにアクセスし、占いのランキングを見た
「えっとね、いて座は今日のランキング1位だって!」
「マジ!?」
「うんうん。で、ラッキーカラーはビリジアン」
「ビ、ビリジアン?」
「そんでラッキーアイテムは玄関に置いてある花瓶だって」
「………随分マニアックなとこ突いてくるね、その占い……」
「そだね。………ってあれ?」
「ん、どーかした?」
「隠れて!!」
私たちは植え込みの中に飛び込むようにして隠れた
「な、何かいるの?」
「ほら、あれ……」
私が指差した先には、何だかほのぼのした光景
「リョマ子と桜乃ちゃんと朋ちゃんだわ!!」
「うーん、あれってデートなのかな?」
「いや、そーいう訳じゃないしっしょ。むしろWデート?」
「でも男一人しかいないじゃん」
「うーん、そうだよねぇ……」
私たちが考え込んでいると、桜乃ちゃんがボールをあさっての方向に飛ばした
「あっ、向こうの森林公園の方行っちゃったよ。ありゃけっこー遠くまで飛んだね」
「あー、あっちの方はやばいなぁ」
「何が?」
「あっちって確か銀華中があるんだよ」
「銀華中?」
「テニス部が今年都ベスト4まで勝ち上がった強豪。クジ運良かっただけだと思うけどね、俺は」
あ、なんか聞いた事あるかも
確か青学が次に当たる相手って言ってたかな
今日も練習やってるだろうからって乾が偵察に行くとか言うてたような
「キヨ、行こう!!」
「えぇ、どこに!?」
「銀華中よ!テーサツテーサツ!!」
「ちょっと待ってよちゃん!俺とこれからデートじゃないの!?」
「黙りんしゃいこのひょっとこソース!お好み焼きに塗ってペロリと食うわよ!!」
ひょっとこソースってあんま売ってないよね
「むしろこれがデートよ!偵察デート!!」
「ちゃん、それはさすがの俺でも訳わかんないよ!」
「ええい、黙ってついて来い!!」
私はキヨの白ランの首根っこを掴んで植え込みから飛び出した
「あっ、センパイ!?」
「リョマ子!テメー覚えとけよ!カメラ買って出直してくるかんな!せいぜい今のおいしい状況をかみしめておくんだな!はっはっはっ羨ましいぜこの野郎ー!!!」
そしてキヨをひっつかんだまま銀華中のコートの方に走り去っていった
「へー、ここが銀華中かぁ。案外広くていい学校だねぇ」
銀華中の広さにビックリしていると、後ろでキヨがまだゲフゲフ言っていた
「もーだらしないなぁ。少し首根っこつかんで引きずり回したくらいで」
「そんな事言ったって……が、学ランの襟掴まれたら息できな……げほっ、げほっ」
「甘ったれんな!世の中にはスーパーで背中刺されても全く気づかずに家まで帰宅した人だっているんだぞ!!」
「そ、それとこれとは関係無い……」
「とにかく中入るよ!テニスコートは今休憩中っぽいから部室でも漁りに行きましょう!!」
私はキヨの腕を引っ張り、部室の方へと向かった
「うわー、やっぱどこもムサいね、男テニの部室ってのは」
「……ねえちゃん、君いっつもこういう事してんの?」
「………こういう事って言うのは@警備員さんを手刀で沈めた事。A鍵をブチ壊してここに入った事。Bこうやって部室を漁っている事のどれ?」
「全部だよ!!」
「やっぱ乾が手に入れられないよーな情報を仕入れるとなると、こんくらいやらんとねぇ」
「……君があんな処分を受けたの、分かるような気がするよ」
失礼な!
「でもさ、あれは不可抗力……」
「しっ、黙って!」
キヨに口を塞がれ、耳を澄ましてみると誰かの足音が聞こえた
「やばい、誰か来る!?」
「どっか隠れよう!!」
私たちは慌てて開いていたロッカーに隠れた
すると、案の定部室のドアが開いた