「(だ、誰か入ってきた!!)」
「(誰!誰なん!?)」
「(あ、あれは……!!)」
入ってきたのは白い学ランの人と銀華のユニフォームを着た人
「(キヨ、同じ制服着てるけど知ってる人?)」
「(知ってるもなにも、あいつテニス部だよ)」
「(えええええ!?………てかここ狭っ!!あんた何でわざわざ同じとこ入ってくんのさ!!)」
「(いや、その方がおいしいかなぁって。夢小説的に)」
「(そんなサービスはいらねー!!!)」
私たちが入っているのは使われていなかったロッカー
いくら物が入っていないとはいえこのロッカー、部員一人一人に与えられているものらしく異常に狭い
二人入れたのが不思議なくらいです。実際私、キヨの上に乗っかってます
「(あっ、ちゃん見て見て!!)」
「(えっ、何!?)」
ロッカーの穴から覗くと、何だかロッカーを漁り始めました
こっちのロッカーは漁らず、反対側の物がいっぱい入ってるほうのロッカーを漁ってます
「(何やってんだろーねぇ)」
「(………多分金漁りじゃないかな)」
「(お金?)」
案の定白ランの人はロッカーからお金だけを出して枚数を数えてた
それを見て銀華ユニフォームの人が慌てて白ランにくってかかった
「(あー、ありゃやばいね)」
「(は?何が?)」
すると何だか生々しい音がした
「(うわ、本格的に殴ってる!!)」
「(ありゃ暫くテニス出来ないね)」
「(えっ、マジで!?それやばいって!キヨ!あたし出る!!)」
「(待ってちゃん!今出たら止める前にこっちが摘み出されるよ!!)」
ロッカーの中で暴れる私とそれを止めるキヨ
狭い中で攻防戦をやっていたら、いつの間にか銀華の人がボコボコにされた上に気絶してました
「だー!!!」
ロッカーの戸を蹴り開けて脱出!
戸が壊れた上その戸が気絶してる銀華ユニフォームの人にぶち当たったけど気にしないぞ!!
「こらそこのお前!人様の部室で何やってんだゴルァー!!」
「ちゃん、俺ら人の事言えないよ」
「私達は何も盗ってないからいーの!!」
「いや……そういう問題でもないような」
さっきまでボコボコにしてた人が「何だこいつは」って目で私達の漫才(っつーか一方的なキヨのツッコミ)を見とります
「えーと、そんじゃあ名前は?」
私が珍しく友好的に話しかけると、白ランヤンキーはただ睨み付けるだけで何も言わない
その上
「テメェに名乗る必要はねぇよ」
とか言い出す始末
ええい、どうしてくれようか!!
「3年の亜久津仁。さっきも言ったけどテニス部だよ」
「へー、かっちょいー名前やねぇ。よし。君は今日からあっくんだ」
「可愛いねぇ」
「でしょ。てな訳であっくん、盗ったお金返しなさい」
「うるせぇ」
それだけ言い放ち、その場を去ろうとするあっくん
「逃がすかー!!」
部室から出て廊下にいるあっくんに助走をつけてフライングクロスチョップをかます
ものすごい勢いで廊下を滑るあっくんと私
「この野郎!逃がすかい!!」
「テメェ、いくらなんでもフライングクロスチョップはねーんじゃねぇのか!?」
「黙れこの不良!お前の頭部はどこまでだ!!」
よくわかんない言い争いをしていると、何かバタバタという音が聞こえてきた
「やばいちゃん!別の人が来たみたいだよ!!」
「ええ、マジで!?」
「テニス部の人じゃないっぽいけど見つかったらやばいよ!」
「キヨ、あっくん!窓から逃げアイター!!」
「どうしたの!?」
「さっきのフライングクロスチョップの着地で足ひねった!」
うごご!痛い!地味に痛い!!
「やばいよ!来ちゃう!!」
「しゃーねぇな……」
「おぎゃああああ!?」
あっくんは窓を開けて私を横に抱えて外に出た
その後からキヨが出てきて窓を閉める
そのままダッシュで銀華中から脱出
「ふー、間一髪だったね」
「あっくん……ありがとー」
あっくんに抱えられたままお礼を言う
けどかなり酔った。ここは格式高くお姫様だっこで行って欲しかったね!
いや、それもなんか異様な光景だけど
「勘違いすんなよ。俺はついでに持ってきただけだからな」
物扱いですか
「キヨー」
「何?」
「あっくんっていい人なのかな?」
「うーん、どうだろ?」
帰り道、まだ微妙に足が痛い私はキヨにおぶってもらってます
あっくんはそのまま私を野放しで帰っちゃったしね!
でも歩けない程じゃないんですよ。歩けるっつーてもキヨがおぶるってうっさいんですよ
「ちゃん。今日の事は内緒にしといてくれないかな?」
「んー、まかしといて!」
「ほんとに大丈夫?」
「おう!このあたしの気持ちを動かすのは好奇心と食べ物とその時の気分、それに気温と湿度と波の高さくらいのもんさ!」
「それは終始動かされっぱなしって事じゃない?」
ちっ、ばれたか
まぁ、あっくんがどんなテニスするか気になるしねぇ
大人しくしてますよ今回は!
………多分
「ねぇ、昨日は何してたの?」
「へっ?」
「僕昨日家まで行ったんだけどいなかったんだよね」
「買い物行ってたんよ。ヅカの使いっ走りで」
「ほんとに?」
「そんなとこで嘘ついてどーすんのさ」
だって嘘じゃないもん。ほんとだもん
それだけじゃなかったけどさ!
「てかさ、何か騒がしくない?」
「そうかな?」
「あ、ねぇ高槻!」
私はばたばたと走り回ってる高槻を呼び止めた
「ねぇ、何かあったの?」
「ああ。越前と荒井と加藤が他校生にちょっかいかけられたらしい」
「え、それって大丈夫なの?」
「越前は石投げられて荒井は顔と腹に一発ずつ。加藤はボール当っただけみたいだ」
「それってかなり問題じゃない!?」
「やった人の目星はついてるの?」
「ああ。山吹中の亜久津って奴らしい」
「えぇー!!??」
あっくんが!?またやったのですかあっくんが!!
「、お前そいつの事知ってんのか?」
「ん、うぇ?あ、ああ。知らない」
「嘘つけ」
「取り敢えずリョマ子達のとこに行こうよ!!」
「ああ、今竜崎のバーさんが越前の手当してる筈だぜ」
「スミレちゃんスミレちゃんスミレちゃーん!!」
足音をばたばた響かせつつ、私は豪快にドアを開け放った
「スミレちゃん!リョマ子は!?」
「ああ、今手当が終わったとこじゃよ」
スミレちゃんに隠れて見えなかったけどリョマ子は椅子に腰掛けていつも通りムスッとしていた
「リョマ子!大丈夫なの!?」
「転んだだけっすよ」
「大丈夫?何針?何針!?」
「何で縫うのが前提なんすか」
いや、だってケガだし!
「ねぇリョマ子!誰がやったか絶対言っちゃ駄目だよ!」
「!」
「つーか転んだだけっす」
「おし!お前は転んだ!なにも無いとこでつまづいてコケたんだ!!」
フジコは何も言わずにじっとこっちを見ていて、大石は後ろでどうするべきかとだばだばしてる
そんな中、リョマ子は一人めらっさめらっさと闘志の炎を燃やしていたのでした
………サツマイモでも持ってれば焼き芋が出来たかもしれないのになぁ