「ミクスドの選手は前へ!」
「………………」
「やぁ、ちゃん。お互い頑張ろうね」
「何で?」
「「え?」」
私のツッコミにペア相手のフジコと相手チームのキヨが反応した
「こういう時ってさ、あっくんとかあっくんとかあっくんとか亜久津仁とかが来るんじゃないの?展開的に」
「そういうフリは無かったと思うけど」
「いやでも展開的にさぁ」
山吹チームの方のベンチをチラ見するとあっくんは偉そうにふんぞり返っていた
ちょっぴりカティーン☆
「おらー!ふざけんじゃねぇぞアーン!?」
「ちょっと!?落ち着いて!!」
いきなり暴れ出した私をフジコが必死に止める
「お前は普通に突っ立ってるだけで危険生物放し飼いとか言われた事あんのかコラー!!(15話参照)」
「危ないよちゃん!ネットをジャンプだけで飛び越えたら絶対躓くから!!」
「お前はほっかむりで校門の前でカサコソしてたらスパイと間違えられたことあんのかコラー!!(11話参照)」
「いや、普通間違えられるから!!」
てか本当にスパイだったんだけどネ☆
「うがー!ふんぞり返ってないでかかって来んかいこのもち肌ー!!」
「何の悪口ですかそれは」
山吹のキヨのペア相手の人が冷静に突っ込んでくる
ちくしょう!メガネっ子め!マニア心をくすぐる気か!!
「動物にとって火がどんなもんかわかってんのかー!火は驚異やねんぞー!!」
「いいから!南海キャンディーズのネタはいいから!!」
「火を怖がるサイのモノマネしてやんぞコラー!!」
「あぁもう!いい加減にしろー!!」
スパーン!とフジコがどっからともなく出したハリセンで私を殴った
痛いよ!厚紙で出来てるとは思えない程に痛いよ!!
「ベストオブ1セットマッチ、山吹サービスプレイ!」
サーブはキヨ。ボールを高く上げて高い打点から打ち下ろすサーブでガンガン攻めてきた
何だっけ、何とか砲
「………ハイパーメガ粒子砲?」
「絶対違う」
「何かそんな感じの名前だったと思うんだけどなぁ」
「て言うか、僕ら中学生だよ?明らかに世代が20代後半から30代位なんだけど」
「あ、そーだ!思い出した!虎砲だ虎砲」
「全然違うよそれ」
合ってるよ。砲ってとこは!
「てかね、あの技一度見たことあったんだけどさぁ」
「その割には、全然警戒してなかったよね」
「いやー、名前だけすごいやつだと思ってさ。桃の弾丸サーブや乾の高速サーブくらいに」
名前だけすごくても絶対あっさり返されるよねあれ
てか技の名前覚えてる人も少ないと思うなぁ
「先輩達、それだけ喋れるって事はまだまだ余裕があると見て良いっすね?」
「まかしといてよ。大体虎砲のタイミングは掴んだし、今度はこっちサーブだから」
「僕も出来るだけサポートするよ」
「あんたは前衛っしょ?つばめ返しひたすら打っておけばいいって。リョマ子もウォーミングアップする必要無くなるかもよ?」
「一回くらい負けてくれてもいーんすよ?」
「はっはっはー、絶対やだ」
私は座っていたベンチから勢いをつけて立ち上がり、屈伸運動をした
フジコもベンチから立ち、ラケットのガットを直した
「ゲームセット、ウォンバイ青学!6−4!」
「ありがとーございましたっ」
「やっぱり強いね、ちゃんは」
「あったりまえっしょー!」
えへへ、とちょっと気味の悪い笑い方をしてみたけど、誰も突っ込んでくれなかった
ふとキヨを見ると、何か遠い目をしている
「あの時よりも強くなってるね」
「あのとき?」
「………ううん、何でもない」
「そうかい?ま、お疲れさん」
あの時?また何かしたか私?
結局、ダブルス2が負けただけで試合はシングルス2のリョマ子が勝って終わった
青学は都大会優勝で、今度は関東大会へと進むことになった
その後
「えへへへへ〜、あっくーん!!」
「おわあああ!!」
ガサッと木の上から逆さ吊りであっくんをお出迎え
と言うのも木に座ってたらかっこつけてやってきたあっくんの姿が見えたからなわけで
お陰であっくんらしくない声を聞くことが出来ました。貴重だ!
「てかさ、今の私逆さ吊りになっているお陰でパンツ系の物が見えてませんか。スコート脱ぐの忘れたんですが」
「ジャージ履いてるじゃん。残念だなぁ」
「あ、キヨ」
「あっくんとちゃんの姿が見えたから走って来たんだ」
「おお、そうでございますか」
そのまま木に引っかけてた足をくるりと一回転して地面につけた
お見事自分!
「テニスやめちゃうの?さっき壇君と話してるの聞こえちゃったんだけど」
「………ああ」
「そっかー。残念。あっくんと試合したかったのに」
「あっくんの抜けた穴は大きいよ?今からでも良いから戻らない?」
「代わりに太一が入る」
「え、そなの?うわー、楽しみ!!」
「仁ー!!」
「うぉ?」
声のした方を見てみると、綺麗なおねぃさん
「仁!探したんだから!!」
「優紀ちゃん久しぶり」
「千石君じゃない!久しぶりねぇ」
「この人は誰?あっくんの彼女?」
「あら、可愛い子ねぇ。初めまして、仁の母親の優紀です」
「………お母さん?」
「見えないでしょ」
だってめっさ綺麗だよこの人!こんなでっけーヤンキーのお母さんとは思えないよ!!
「世の中にはこんなお母さんもいるんだねぇ」
「ちゃんのお母さんだって綺麗なんじゃない?」
「………………………………………うーん……」
綺麗なのか?綺麗って言えるのかなあれは?
「えーっと、冷凍ご飯がまだ残ってるからー………」
歩きながら今晩のメニューを考えていると、横を見慣れた車が通り過ぎた
「」
「あれ、跡部じゃん。コンソレーションお疲れさま」
「あれくらい当然だろ?」
「さいですか。でもルドルフに勝っての優勝だもん、すごいよ。てか何でこんなとこに?」
「改めて食事に誘おうと思ってな。イタリアンの店を予約しておいた」
「うーん、まあいいけどさぁ。ちょっと待ってよ。試合後で汗だくだから着替えたいんだよねぇ」
ついでに言うなら風呂も入りたい
「上がらせてやるからちょっと待っててよ」
「の部屋にか?」
「てか私一人暮らしなんだよね」
てけてけ階段を上って、3階にある私の部屋に辿り着く
「あんま物無いから結構片付いてるんだよね。まあ入って」
私は鍵を開けて入り、靴を脱いだ
跡部もその後に続く
「さて、ここが私の部屋っす。どうぞ入っ…て………」
「よ」
バァン!と派手に音を立てて閉めてみる
「あ、あ、あわわわわわわわわ!!」
どうしようかと挙動不審になっていると、リビングに繋がるドアがまた開いた
「おっす、元気してたー?」
「…………誰だ?」
「………私の母さんです」