「りっりっりー、リョマ子のりーは、利口のりー」
「………………」
「よっよっよー、リョマ子のよーは、良い子のよー」
「………………」
「まっまっまー、リョマ子のまーは、真面目のまー」
「………………先輩」
「こっこっこー、リョマ子のこーは………コラ!酢昆布ばっか食べてんじゃない!のこー」
「明らかに詰まってるのバレバレじゃねぇか」
「でも酢昆布はおいしいんだよー。誘惑に負けるんだよー」
「………先輩達、ものすごく気が散るんすけど」
高槻と二人でおしゃべりをしていると、リョマ子に睨まれた
「たりめーだ。お前の気散らせるためにやってんだっつの」
「たりめーだ」
「………先輩達、試合は?」
「「全勝で終わった」」
ふふん、と勝ち誇った顔をしてみる
今日の部活はランキング戦
これに勝ち残らなきゃ関東大会出られないんだよねー
「リョマ子、次大石とでしょ?」
「……そうっすけど」
「よし、リョマ子が負けるように念を送ってやろう。ついでに身長も縮むように」
「足短くしてやれ」
「うむ。う〜、短足になれ〜!短足〜短足〜短足〜豚足〜」
豚足はコラーゲンが豊富なんだよ!
いや、全く関係無いけど
「ゲームセット、ウォンバイ越前、6−3!」
「あれ、勝っちゃった」
「強すぎだよなーありゃ」
大石だってシングルスプレイヤーじゃないけど十分強い筈なのに
やっぱ強いのかなぁリョマ子
「不動峰の伊武も言ってたけどよ、お前一回ボコボコに負かされた方がいいんじゃね?」
「じゃあ高槻先輩が負かしてみて下さいよ」
「うわ、こいつ今すぐ殴りたいんだけど」
「落ち着いて高槻。殴ったって得しないよ。むしろ美少年虐待の罪で私が高槻を殴らなきゃならんくなるよ」
「先輩も、いつ試合してくれるんすか?」
「だからしないって」
でもみんなレギュラーに残れて良かった良かった
ここまで来て関東大会出られないって何か中途半端で嫌な感じだもんねー
「へ?桃が来てない?」
「もう三日目よ?無断欠勤は禁止なのに」
そう言えばここしばらく姿を見ていないような、ような、ような………
「女テニも無断欠勤って禁止なの?」
「一応ね。あんたは休む時無断欠勤の方が多いけど」
「ミステリアスな女を演じたいお年頃なんです」
「何でも横文字使えば許されるとでも思ってるのかしらこの女は。おほほほほほ」
「うぺぽぽぽ……おえっ」
「え?」
「気持ち悪い。あーこりゃテニスコートにキャッシュバックキャンペーンしちゃうかもしれないなぁ」
「汚いわよ」
「てな訳で今日の部活はお休みしまっす!うちでキャッシュバックしまっす!」
「あ、こら!」
バッグを抱えて自転車に放り込み、私はチャリンコを漕ぎ出した
「先輩」
チャリンコを漕いでいると、後ろからちっさいのがてけてけと走ってきた
「あら。妖怪クリクリオメメ。どうかしたの?」
「普通に呼んでください」
「おう、リョマ子」
「桃先輩のとこ、行くんすよね?」
「あー、まぁね。今日桃の頭をオンディーヌ家の一族みたいにしなくちゃいけないから……」
「言い訳するにしてももう少しまともな言い訳考えて下さい」
いいじゃねーかよー。桃がフランス貴族になんだぞー
あ、でもさすがにキモいか?いや、ギリギリか?
「でもさ、こうやって出てきたのはいいけど桃の家ってどこにあるかわかんないんだよね。リョマ子、仲良しなんだから家くらいわかんないの?」
「知らないっす」
「行った事無いの?」
「一回じゃ道覚えらんないっすよ」
「おぉ、貴様方向音痴だな!私もさ!!」
「方向音痴の放浪癖っすよね」
「最悪だな」
「自分で言ったらお終いっすよ」
そんな感じのショートコントを繰り広げていると、ボールの音が聞こえた
ぱこん、ぱここーん、て感じで
「あれ?そういやここってストリートテニスコートの近くじゃない?」
「桃先輩、いるかもしれないっすね」
「てかいて欲しいね。それでないとえんえんと青春台さまようことになりますよ」
「それは嫌っすね」
チャリンコを階段の下に止めて、階段を三歩進んで二歩下がって結局はリョマ子に引っ張られながらも上った
そしたら、案の定いた
「桃ー!」
「先輩!越前!」
「………あれ?なんかいっぱいいるぞ?」
桃と可愛い杏ちゃんと水色の集団
「氷帝の奴らっすね……」
リョマ子が小声で私に言った
おぉ、確かに見覚えのある顔がちらほら
「お前が例の青学1年レギュラーか。山吹中の怪物亜久津を倒した…」
「えっ、あのチビが?」
「あっくんが怪物かぁ、変わった事言うねぇ。あんなめんこい不良なのに」
「方言丸出しっすよ」
めんこい……北海道弁で『可愛い』の意。
「桃、こんなんいいからさっさと戻るべ。こんなのといたら下まつげ長くなりそうだわ」
「えらい言い草やなぁ」
「あ!なんちゃって眼鏡!」
「忍足や。この前はどーも」
「相変わらずの伊達眼鏡ですか」
「まあ、視力は落ちてへんしな」
うあー、目潰ししたい!目潰し!!
「とにかく桃、帰ろうよ。少しでも早く帰ってグラウンド走るの少しでも減らそう!」
「ちょ、ちょっと待って下さい先輩!」
「何?まだ桃のテニスシューズの靴ひも全部カンピョウに変えた事怒ってんの?」
「いつの間に!?」
だって部室にそのまんま置いてあったしなぁ
「先輩、いい加減戻らないと日暮れるっすよ」
「おぉ、もうこんな時間ですか!?よし、リョマ子!桃連れてこい!」
私が猛ダッシュで階段を下りると、リョマ子が桃を引き連れて…て言うか引きずって階段を下りてきた
只今、チャリンコで青春学園に帰っています
桃はチャリンコで来てたらしく、一人で運転
私達はリョマ子が走って来たので二人乗り。運転リョマ子
走って帰るって言っても後ろに乗れの一点張り。この場合桃の方が適任だと思うけどなー
そんでもって桃がさっきから駄々こねてる訳です
「先輩、戻りますよ!」
「何でさ」
「あいつに誤解されたまんまなんすよ!」
「何?桃が実は酢昆布がたまらなく好きだって?しょーがないさー、あれは犯罪的なうまさだもの」
「違うっすよ!あいつら杏……いや、橘妹を俺の彼女だと思ってるんすよ!」
「………聞きました?リョーマ君」
「聞いたっすよ」
「あーやだやだ。いつの間に『杏』なんて呼び捨てにしてるのかしら」
「彼女だって言うのもあながち間違ってもいないっすよね」
「だから違うって……」
「桃先輩、前」
「は?」
桃は看板にぶつかった!70のダメージ!!
「……先輩、あれどうするんすか?」
「ほっとこう」
「そうっすね」
こんな時ばっかり満場一致
「てかさ、リョマ子さん。私重くない?」
「重くないっすよ」
「だって足下ふらついてるし」
「重くないっす」
「……くらえ!」
なんだか生意気なので運転中のリョマ子に子泣きじじいごっこ
「先輩!危ないっす!」
「運転変わる気になった?」
「嫌っす!!」
思いっきり蛇足運転になっておりますが
この後テニスコートに戻ると、桃はグラウンド100周、私とリョマ子はグラウンド30周を言い渡されました