「ねぇ大崎ー、暇だよ。暇だからコロッケのモノマネしてよ」
「モノマネする人をモノマネしてどうすんのよ」
「揚げられる時でいいからさ」
そっち!?

今日は大崎の家に遊びに来ています

「ねぇ、何時に待ち合わせなの?氷帝の跡部君と」
「………10時」
「あと1時間後か……ちゃんと行きなさいよ?」
「うー、まぁ約束は約束だし、このまま真っ直ぐ行こうかなぁって思うてるですよ」
「何?そのカッコで行くの!?」
「え、何かおかしい?」
「いや、おかしいって訳じゃ無いけど………」

古着屋で買った某ネズミTシャツとユニクロのジーパン
スニーカーにレザーブレスレット、メッシュのキャップ

「………服、貸してあげるからそれ着てきなさい」
「えー、大崎の服ってヒラヒラフリフリギャルギャルしてんじゃん」
気持ち悪い擬音つけないでよ。大体デートにそんな格好で行く方が間違ってる!」
「だってデートじゃないもん」
「うるさい」
「ギニャー!!」

身ぐるみ剥がされて服着せられて髪形いじられて十分後

「やだやだやだ!こんな服着て行かれへーん!!」
「ぐだぐだ言ってないでさっさと行く!」

大崎家の玄関から蹴り出され、しかも戸に鍵をかけられた


ショート丈のジャケット、白い膝丈のワンピースで中にはレギンス、足元は踵高めのパンプス
髪の毛はコテで巻き髪にして、それをサイドで纏めてある

あかん、泣きたくなってきたわ。マジで




「ねぇねぇ、君1人?」
残念、3人です

シュババッと分身の術を使ってみる。そして時にはもにもにげるげると分裂してみる

さっきからナンパやキャッチセールスはこれで撃退!

出来るのならやるべきだわ


ちゃんちゃらちゃんちゃん、ちゃんちゃららららら

エレクトリカルパレードが鳴り響いた
えーと、この着メロは……

「もしもし桃?」
「もう起きてたんすか?いつもなら確実に寝てる時間なのに」
「うん、まあね」
「今日、昼からレギュラーでボウリング行くんすけど先輩も行かないっすか?」
「あー、タイミング悪いなぁ。今日はダメなんだわ」

ごめんなー、と言うと桃が少し考え込んでからこう言った

「あ、もしかしてデートっすか?」
「ち、ちゃうもん!デートちゃうもん!!」
「………マジっすか!?デート!?」
「桃!!」

多分受話器の向こうで桃がニタリと笑ってるだろう
ああ腹立たしい!

「こりゃあ越前に言わなきゃいけねーなぁ、いけねーよ」
言いふらしたら夜な夜な枕もとに現れて秋田名物『なまはげ』と一緒にアンガールズのネタやってやる
「すんません」
次長課長の築地の朝市のネタもやってやる。もちろんなまはげがマグロ役で
「すんませんマジで言わないっすから!失礼します!!」

ブツッ、と強制終了的に切れた電話
これで桃のルートから漏れる心配は無いでしょう、うん




待ち合わせの時間まであと3分

そう言えばあほべ、どんな格好して来るんだろう
やっぱデートだと気合入れた格好してくんのかな

かぼちゃパンツとか

白タイツとか

もしくは白タイツとかあるいは白タイツとかまたは白タイツとか




「待たせたな」
出たな白タイツ!!
「アーン?」

やって着た跡部は黒パンツにジャケット、シャツ。
ごつめのブランド物のアクセサリー


ふ、普通だ!跡部のくせに!!

「ふーん………」
「何?」
「たまにはそんな格好もするんだな、お前」
「わ、悪かったなー!どうせ家にはTシャツとパーカーとデニムばっかりさ!全身借り物っつーか押し付けられたもんだこんにゃろー!!」

殴りかかろうとしたら、腕をつかまれた
そしてそのまま腕を引っ張られる

「行くぞ」

な、何かデートっぽい!

「やだやだやだー!一人で噴水で遊ぶー!!」
「テメェここまで来て何駄々こねてんだ!行くぞ!!」
やだぁー!!おうち帰って『太陽にほえろ』見る!ゴリさん見たーいー!!
「いちいち好みが渋いんだよテメェは!!」

だだこねて抵抗してみたけどガリガリとサンダルの底が削れる音がするだけだった

※ゴリさん……竜雷太。ゴリさんのゴリはゴリラのゴリじゃなくて、ごり押しのゴリらしい。







「……………」
「どうした?紅茶は嫌いか?」
「……いや、むしろ好きですけどね」

あほべお勧めだと出されたミルクティーを飲みつつ、本日のお勧めにあったミルクレープをもきゅもきゅと食べる
うむ、美味しい。多分高い。なんか常連ぽいし、あほべが

で、そのあほべはブラックコーヒーを飲んでいます。中学生らしく雪印コーヒーでも飲まんかい

つーか、さっきからこっちのテーブルに視線が集まるのです
端の席で、私が全体を見渡せる場所にいて、あほべは背中を向ける状態

「なんか視線が痛いのデス」
「まあ、俺はここの常連だからな」
「女を連れ込むこともよくあると」
「………まあ、な」

そりゃ視線も集まりますわなぁ。このやろ!

「でもここなら青学のみんなは来ないだろうし、見つかる事も無いだろうからね。良かった良かっ……」
「おや?青学のさんに、氷帝の跡部君じゃないですか」

ごしゃあっ

近くにあった観葉植物を掴み、思いっきり振り上げて鉢の部分を鈍器にして頭を殴りつけた
バタリと倒れたのはルドルフのはじめちゃん

「逃げるよあほべ!!」

先程とは違い、今度は私があほべの腕を掴んで走り出した
ミルクレープもったいない!全部食べたかった!!

「おい!確実に死んだぞアイツ!!」
「大丈夫!はじめちゃんはそう簡単に死なないし死んでも教会で生き返るから!!」
ドラクエかよ!
「ほら、爆発してやられても次の話では元気になってるのが戦隊モノのセオリーだし!!」
戦隊モノじゃねぇよこれは!!






「ふー、ここまで来れば大丈夫ってあだー!!!!

バランスを崩して思いっきり派手に転んでしもうたよ!

ヒールの高いパンプスで走りまくったら足にでっかい水脹れが出来てしかも潰れていた
痛いよー!大崎のアホー!パンプスなんか履かせんなー!!

「仕方ねぇな」

あほべがしりもちついて転んでる私をひょいっと持ち上げた
そんでもって肩に乗せる

「ってこら!やめんかいボケ!!降ろせ!今すぐ降ろせ!ただちに!」

新鮮活魚のようにビチビチと暴れ回る


「あぁ!お前は青学の……!!」

めこっ

問答無用で踵落とし

「ダッシュ!」
「またかよ!!」

盗んだバイクで走り出す……じゃなくて、水脹れの足で走り出す








「キャミオにまで見られてしまったか……後で口止めをしておかないと。よし、家にポマードをいっぱい送っておこう」
「止めとけ。嫌がらせだと思われるぞ」

まだポマードって歳でもないか。アチャー!


「あれ?てかもうこんな時間だよ」

時計を見ると、午後五時を指していた

「なんか大半が走ってばっかりのような気もしましたが」
「つーか実際そうだろ」

さすがに私もあほべもぜーぜー言っておりますが

「悪かったねー。今度おわびにまたどっか遊びに行く?」
「お前が良いならな」
「普通に遊ぶなら全然良いよ。どーせなら氷帝の人みんなで遊ぶ?」

つーかめんこい人たちで遊びたい。ジロちゃんとかおーとり君とか

「じゃあ今日はもう帰る?」
「ああ……でもお前それで歩けんのか?」

足を見ると、かなりグロテスクな状況
どの位かって言うと、カチローがヒイィィィ!!!と悲鳴を上げる位
微妙にわかりにくいか?いっつも悲鳴上げてる感じするし

「走ってみせるさ、友の為に!走れメロス!!」
「いいから黙って送られとけ。ほら」

跡部が私の前にしゃがんで背中を向けた
………おんぶ?
普通に車とかチャリとかじゃなくて、おんぶ?

でもまあ足が痛いので素直に乗る事にする


「あんま人通り多くない所通ってね」
「別に俺は誰に見られてもいいんだがな」
「あたしがいやなのです」
「九州に行く事になった」
「んぉ?」

何か聞き覚えのある声

先輩!?」

桃の声でその場にいた全員が振り向いた

青学メンバー勢揃い



その場には何かめちゃめちゃ気まずい雰囲気が流れた

無言のリョマ子がめちゃめちゃ怖かったです