緑山との試合で勝った後のある日
「ねえ高槻、って今日休みなの?」
「あー?何で俺に聞くんだよ」
「だって朝練もいなかったし……もう3時間目だよ?」
「あいつの遅刻は今に始まった事じゃねぇだろ。なぁ英二?」
「そういや、授業出ないで部活だけ来たこともあったよなぁ」
「あ、先生来たよ」
「おー、皆席着けよー」
3時間目は英語、担任の教科だ
担任の声が教室に響く
「何だ、はまだ来てないのか?」
「はっはっはっはっはー!!しーのやーまセンセーイ!何処を見ているのですか!!は来ておりますぞー!!」
「うわー!地味に窓から覗いてるー!!」
「、遅刻してきて随分尊大な態度だなお前は……」
「おはよーございますせんせー。まだ欠席にならないよね?よっこいせっと」
は窓枠に片足をかけた
その時
どかっ
「おぎゃー!!!」
担任に蹴り出されそのまま落ちていく
下の方でがしゃがしゃという派手な音とぼてっ、と言う落下音が聞こえた
「は欠席………と」
担任はそのまま窓を閉め、『』の欄に欠席の×印を付けた
「まったく、やんなっちゃうよねー」
お昼ご飯はカレーライス。うめー
「、あんたお弁当なのにカレー?」
「だって寝坊して弁当作る暇無かったし、あと1週間を223円で生きなきゃならないから買い弁出来ないし」
「仕送り生活ってのも辛いもんだな」
「これあげるにゃ」
菊からコロッケをもらった。やったぁ!コロッケカレーだ!!
「写真売りさばいたお金は?」
「バスのおっちゃんへのツケ払って無くなった」
「写真ってすぐに焼き増ししてもなかなか売れないしねー……」
「うーん………あ、そーだ!!」
「何か良い事思いついたの?」
「うん!フジコ、大石に今日は頭が痛くなる予定だから部活休むって言っておいて!」
「予定って何!?」
コロッケカレーを一気に平らげお茶で流し込み、私はダッシュで教室を後にした
「えーと、カメラは使い捨てが二つくらい余ってるでしょー?」
「先輩」
「おお桃にリョマ子。丁度良いところに来ましたね」
「何スか?」
「ちょっと自転車で神奈川まで乗っけてってよ」
「はぁ!?」
桃とリョマ子を無理矢理引きずっていざ出発!
「お、重い………」
サドルには桃、後ろにリョマ子、その間に私
ちなみに私は桃におんぶされてる形となる
なかなか無いよこの3人乗り
「これ、下手したら走った方が早いかもしれないっす」
「そうなったら走るのは桃だね」
「何で!?」
「大丈夫!リョマ子軽いから私でも多分漕げるよ」
「その時は俺が漕ぐっすよ」
「無理すんなって、絶対私の方が体重重いし力もあるよ」
「絶対俺の方が上っす」
強がるなぁリョマ子
いっつも桃に乗せてもらってるくせに
「………二人とも俺が降りるの前提で話進めんなよ………」
そんな感じでフラフラと揺られること数時間
「うー、着いた!!」
「何時間乗ってたんすかね。もう放課後っすよ」
「逆にそっちの方が好都合ってもんさ!」
元気いっぱいの私とリョマ子の足下にはバテバテというか棺桶に片足入りかけの桃
「もー、だらしないなぁ桃。鍛え方が足りん!」
「………俺は先輩と越前乗せて神奈川まで来れた自分を誉めてやりたいっすね……」
「甘い!もうこうなったら桃にはとことんマッチョになって貰わなきゃね!」
もっとこう、筋骨隆々身の丈五メートルくらいに!
「それ、テニスできるんすかね」
「それもそっか」
「そんな事より先輩、ここって………」
リョマ子が校門に書かれている学校名を見て言った
「立海大付属中ですが何か?」
「ここってテニスの強豪校とか聞いたんすけど」
「おぉ、ちゃんと勉強してるんだね。偉い偉い」
よしよし、と頭を撫でてやるとリョマ子はむっとした顔になった
「こんなとこに何の用っすか?」
「もちろん、写真を撮りに」
「………偵察っすか?」
「いや、私の生活費の為」
使い捨てカメラの包装を破り、一つをリョマ子に渡した
「これ使い切るまで写真撮ってきてよ。狙い目はダブルス1の二人とか丸井君とか部長さんとかだね」
「随分詳しいっすね」
「一年前くらいの月刊プロテニスを乾から借りたんだけど、それに立海特集みたいなのやってたんだわ」
「ふーん。でも俺、その人達の顔知らないっす」
「えーとね、白髪と七三分けがダブルス1の二人でフーセンガムが丸井君。サイドの髪の毛がダシ昆布みたいなのが部長さんだよ」
「………それ、本当に人気ある奴ばっかなんすか?」
「うん、一応」
確かにこの説明だけじゃかっこいいとは思えないよなぁ
持ってくれば良かったなぁ、月刊プロテニス
「お前達、青学だな?」
「はいはい、そうですうわぁ!?」
振り向けばおっさん黒帽子と糸目がいた
ものすごい威圧感がありますのことよー!!
「86%の確率で3年の、69%の確率で1年の越前リョーマ。二人ともレギュラーだな」
「あ、あれ?桃は?」
「逃げたみたいっすね」
チャリンコと一緒にどこかに身を隠したか!
くそう!先輩見捨てやがって!!
「レギュラーが揃って何の用だ?」
「何すか、あんた」
「あー!あの時のおっちゃん!」
「随分身も蓋もない言い方だな。こう見えても弦一郎は中学生だ」
「蓮二……お前もな」
どっちもどっちって気がしなくもないんだけどなぁ
「先輩……やばくないっすか?」
「そうね。かーなーりーやばいかも」
「どうするんすか?」
「フォフォフォフォフォ、頼もしい先輩におまかせあれ!」
私はサッとどこからともなく道具を取り出した
「致死量の睡眠薬の入ったカプセルが飛び出る吹き矢ー!!」
「犯罪だー!!」
「ちなみに作ったのは私の父です」
「娘になんてもん持たせるんですか、あの父親は……」
ちょっとドラえもんチックに道具紹介したのに辛辣なツッコミを頂きましたよ
てか立海の二人、むっとした顔でこっち見てますよ
対応に困った顔か?そうなのか?
「ふっふっふ、これを吹かれたくなければ大人しく私達を逃がすのだ!」
「ああもう、どっから突っ込んでいいかわからないっすよ!!」
リョマ子が珍しくテンパってるよ
ツッコミ一人じゃいっぱいいっぱいってか?まだまだだね!
あれ?パクリ?
「ほら、吹いちゃうよー吹いちゃうよー」
口を吹き口に当てて牽制
「ほらリョマ子、今のうちに逃げ………」
ごっきゅん
「うわー!飲んでもうたー!!」
「それシャレになんないっすよ先輩!!」
「あかん、眠くなってきた、僕もう眠いんだよパトラッシュ……」
「駄目っす!寝たら死ぬっす!確実に死ぬっすよ!!」
リョマ子はどうすればいいのか迷った挙げ句、私を担ぎ校舎の中に入っていった
「…あれは本当に青学レギュラーなのか?」
「今ので女の方がである可能性が100%になった」
「………手塚も、苦労してるようだな………」