初めまして
俺の名前は切原赤也
まだまだ人生これからの18歳。天秤座のO型
そんな俺は只今家出中です
「えーと、磯野キリコだっけ?」
「違うよ。キリンだよ」
「切原赤也君ですよ」
「キリハラ?キリハラってどういう字?切り腹?」
「切腹かよ」
「キリハラはそのまんまですよ。切るに原っぱの原」
「そのまんまって何だよ。オメェのインテリジェンスな頭の中なんかわかんねっつの」
「インテリメガネー」
…………
「えっと、あー、まあいいや。磯野キリコ君」
「切原赤也です」
「いいじゃんか。磯野キリコ。B級上等じゃねぇか」
「キリ以外どこもあってないですよ」
「キリが合ってたら40%合ってることになるよ。40%ありゃ十分でしょ」
何だその理屈は
「……つーか、あんたらなんなんすか?」
「ふっ、なんだかんだと聞かれたら、答えてあげるが世の情ホグァ!!」
女の人が眼鏡の七三分けの人の裏拳を喰らった
「自己紹介が遅れて申し訳ありません。私達は幸村探偵事務所の者です」
渡された名刺には、『幸村探偵事務所 所員 柳生比呂士』と書いてあった。
「あなたのお父さんとお母さんにあなたを探すようにと言われて来ました」
「違うよヒロシ、依頼内容は『居場所を突き止める』んじゃなくて『居場所を突き止めて家に帰す』まで」
「そうでしたか」
「めんどくせーよなぁ」
赤い髪の毛の人がフーセンガムを膨らましながら言った。
「と言うわけでキリコ、家に帰るよ」
「嫌だ。俺は家には帰らない。もうあの家にはいたくねぇんだよ!」
「黙れこのチリ毛!!」
女の人が俺の頭に思いっきりチョップを喰らわせた
「世の中には嫌なことやうんざりすることが盛り沢山なんだよ!その度にいちいち家出だのなんだのしてたらその内逃げ癖がついちゃうよ!いい?一旦家に帰って両親と向き合って話しなさい!そうでないと依頼料が入らな……ゲフンゲフン!」
今明らかに依頼料って言った
「とにかくお家に帰れ!ゴーホーム!!」
「俺は絶対に帰らない!」
「頼むよ!帰れよ!今月家賃払えなくて追い出されたらどうすんだよ!」
「そんなん俺の知った事じゃねぇよ!」
「で、何でここに連れて来るんだ」
「この東野コージ頭が家に帰りたくないって言いやがるんだもの」
「くせっ毛だからって東野コージは無いんじゃないっすか」
「帰りたくないだと!?それを説得するのがお前達の仕事だろうが!まったくお前等はたるんど」
「黙れ雇われ所長」
女の人(ちなみに髪はストレート。腹立つ)がドスの利いた声でそう言うとおっさんは言葉に詰まり、黙った
「女の人じゃないよ。って言う麗しくキュートな名前があるのよ」
読まれた!?
「それでさ、ものは相談なんだけど」
「なんだ」
「こいつさ、うちで雇わない?」
「「は!?」」
突拍子もない言葉に、おっさんと俺の言葉がハモった
「だってさ、アルバイト足りないんでしょ?」
「う、うむ……」
「試しに少しの間だけ雇ってみようよ」
「依頼はどうするんですか?」
「もちろん依頼されたからにはきちんとやるよ。それは少しずつ説得していくから。ね、ここで働いてみない?」
「えっ……」
いきなり笑顔で微笑まれてビックリした
だけど家出してアテがない今、俺にとってはまたとない機会だ
「はい!やらせて頂きます!」
こうして、俺の探偵事務所での生活はスタートした
かのように思えた
3日後
探偵事務所のドアが開けられる
俺がここに来てから、初めてのお客さんだ
事務所の掃除を任された俺は、掃除を中断してドアの方へ駆け寄った
「ようこそ、幸村探偵事務所へ!」
「赤也!」
「オヤジ!?」
「や」
「あっ、!」
やってきたのは俺のオヤジ
その後ろからひょっこりとが顔をのぞかせる
「俺を騙したんすね!」
「はっはっはっはっは!美人が皆優しいと思うな!あたしは可愛いエンジェルさんだから優しくないのだ!!」
「素面でエンジェルとか言うな!つーか天使が皆優しくないみたいに言うな!!」
「3分クッキングが『3分で出来る料理』だと思うな!あれは『3分で放送される料理』だ!!少なくとも私の家のレンジやフライパンは蓋を開けたら完成品なんて出てこないからなぁ!!はっはっはー!!!」
なんかもうわけわかんない
「と、言う訳でそこで親子どんぶりで話しなよ。そんじゃ、一時間後くらいにー」
はガチャンと戸を閉めると、外から鍵を閉めた
慌てて駆け寄りドアノブを捻るが、開かない
………腹割って話すしかないか
一時間後
事務所のドアが開けられた
「……この度はありがとうございます。これが報酬です」
「はい、確かに受け取りました」
「………で、あんたは帰らないの?」
「オヤジと色々話したんスよ」
「うん」
「……案外、すんなりと話せた」
「そりゃ良うござんした」
「てな訳で、これからもよろしくッス」
「ん?」
「いやー、俺高校卒業して半年経ったんスけど未だに職見つからなくてー」
「んん?」
「ここでバイトして、その内正社員にでもなるッス」
「んんん?」
「さってと、依頼料入ったし給料くださいよ」
俺はの前に手を差し出した
封筒は分厚いし、かなりの額が入っているだろう
「不景気のバカヤロー!!!!」
秋の空に、の絶叫が響き渡った
こうして、俺の本当の探偵事務所所員としての生活が始まった。