こんにちは、切原赤也ッス

俺は今日から幸村探偵事務所の所員として働く事になりました


これからどんな事件が待ち受けているのか、今からめちゃめちゃ楽しみっす!



「あーうざっ。うざいったらありゃしないわね」
「いきなり何すか!」
うるせぇ!!そのモジャ毛全部ストレートにしてそこらの通行人と同化させてやろーかぁ!
ストレート頭にくせっ毛の悩みなんてわかるかぁ!!
あーわかんないね!美しい私とは無縁の悩みだわー!!

センパイと俺はふーっ!!と威嚇し合う

その間を仁王先輩が割って入ってきた

「ほれほれ、静かにしんしゃい。騒いだって腹が減るだけじゃ」
「うぅー……そうだったぁ。腹減ったー………」

センパイはソファーに転がった

「あれ、センパイ方朝まだなんすか?」
「朝どころか昨日の夜から水しか飲んでませんよ」
「えぇっ!?何でなんすか!?」
「普通に金がないんじゃよ、うち」
「でも、依頼とかの報酬は……」
「こーんな不景気に仕事がぽんぽん入ってくるわけないっしょー?」

マジっすか!?

俺の給料、ちゃんと支払われるんだろうか……

「にしても腹減ったねー。買い物公園が近くにあったらハトとっつかまえて食うのに」
「ハトは殆どが筋肉で筋張ってますからあまりおいしくないと思いますよ」

※買物公園……北海道にある駅前から続く歩行者天国。デパートなどが建ち並ぶ
       平和通りとも呼ばれ、平和の象徴であるハトが放されているが、時々放し飼いとは思えない程丸々太ったハトがいる


「ただいまー」
「おかえりブン太」
「メシ獲ってきたぜい!」
「え、マヂで!?」
「ほら、うり坊!そこの道走ってた」

ちなみにここ、かなり裏道で人もあんまし通ってません
なのに何でイノシシがこんなとこに?

「やった!ぼたん鍋しよー!!」
「真田が今包丁研いでるから待ってよーぜぃ」
「久しぶりにたらふく食えそうじゃの」
「え……もしかしてここで殺して食うんすか!?」
「もちろん」

センパイは当たり前のように頷いた

「センパイ!いくらなんでも可哀想っす!それにイノシシなんかケモノ臭くて食えたもんじゃないっすよ!!」
「大丈夫。味は良い」
「トンビよかええじゃろ」

食ったの!?

「真田まだかなー!早く食ーべーたーいー!!」

センパイが待ちきれないと言った感じで足をバタバタさせていると、小さくベルの音がした

「あ!お客さんっすよ!いらっしゃいませー!!」
「え、ほんと!?いらっしゃいま……せ………」

お客さんをみるやいなや、皆の顔が一気にひきつった

「この人知り合いっすか?」
「やあ、捜し物ついでに様子見に来たんだけど」
「お……お前、旅行行ってたんじゃ………」
「昨日帰ってきたんだよ。札幌の時計台って案外ショボいんだねぇ。道路沿いで車すごいからまともに写真も撮れやしなかったよ」
「あ、あはははは……」
「………………
「はいぃいぃ!!!」

センパイはあわてて返事をした

「その腕の中にいるの、僕のペットなんだけど」
「え?あ、あわわわ!このうり坊が!?」
「そう。返してくれるかな」
「はいはいはい!返しますとも!!」

センパイはずいっと慌てて両手を突き出し、うり坊をお客さんに渡した
うり坊はひっしとお客さんの服にしがみついた

「そこら辺走ってたのを保護したんです!」
「へぇ………が?」
「いーやっ、俺だぜぃ!」
「そうか、ブン太が……ありがとう」
「どういたしまして!」
「でもさっき『これで今日はしのげるぜぃ!』とか言ってなかった?」

一気に場の空気が冷たくなった

「き、気のせいだよ!きっと聞き間違い!」
「そう?」
「俺そんな事言った覚え無いぜぃ!!」

バン!


包丁は完璧に研いだぞ!猪はどこだ!!















「えっと、お客さんはどんな依頼ですか?」
「ふふ、僕は客じゃなくてここの所長だよ」
「えっ!?」
「初めまして、幸村探偵事務所所長の幸村精市です。君が新しくここに入りたいって言う子だね?」

幸村所長は笑顔で俺に手を差し出した
俺は流血沙汰って言うかもはや半死半生の真田先輩を横目で見ながら握手した
真田先輩は先輩に木の棒で突っつかれている

「ここに入る分には全然構わないけど、あまり高収入は望めないよ?人様のペット鍋物にしようとするしね
「でも俺、一度探偵の仕事ってやってみたかったんす!少し位貧乏だって大丈夫っす!!」
「だって。良い心構えじゃないか。ねぇ?」
「え?あ、ああ、そうっすねぇ」

真田センパイを構うのに飽きたらしく、センパイはややはしゃぎ気味でうり坊と遊んでいる
………さっきまで食おうとしていたと言う事実はこの際無かったことにしよう

「それじゃあ、ここで雇ってくれるんすか!?」
「まだ喜ぶのは早いよ」

幸村所長は俺に何かを差し出した

「これは?」
「まあ、簡単に言えば入社テストかな」

俺はそれを手に取った
何枚かの紙がクリップで留めてある

「依頼を持って来たんだ」
「えっ、マヂで!?」

それを聞いて先輩方はわらわらと寄ってくる


「仕事内容は『息子の実態調査』」
「息子の……」
「もちろん、やるよね?」